私的未解決問題集
これは何?
この記事は私が数学やそのほかの勉強をしたり、あるいはお風呂に入ってたりお散歩をしているときにふと出てき問題のうち、未だに未解決な問題を忘れないように書き記したものです。問題を解決した方がいらっしゃったら是非一報連絡をください。
未解決問題
1. 群の完備化の準同型写像について
群 $G$ を $G$ の部分群列 $\{G_n\}$ で完備化したものを $\displaystyle \hat G := \lim_{\leftarrow} G/G_n$ と書くことにします。 また、$G$ の元 $x$ を定数列 $(x)$ に送る写像を $\phi:G \rightarrow \hat G$ とし、 $\phi$ が同型写像のとき $G$ は完備であるということにします。
問題
$G$ と $\hat G$ の間に適当な同型写像 $f$ が存在するとき、常に $G$ と $\hat G$ は完備 i.e. 標準的な準同型写像 $\phi: G \rightarrow \hat G$ は同型であるか?
備考
この問題は、「$f = h \circ \phi$ なる準同型写像 $h: \hat G \rightarrow \hat G$ が存在するか?」という問題に置き換えることで $\phi$ の普遍性的なアレがこう見えてくるという風に捉えられるよね~...みたいな。
剰余群のお気持ちと環への拡張
はじめに
こんにちは、トッチです。2年ほど前からAtiyah, MacDonaldの「可換代数入門」を読むゼミをしていて、12月までに「第10章 完備化」までセミナーを通してのんびり読んできました。そんな感じで環論をずっとやってきたのにもかかわらず「剰余環」、もっと言えば「剰余群」についてしっかりと理解できていないことに気が付きました。そこで、この記事では剰余群・剰余環について定義から復習した記録を書き綴ります。
群の定義といくつかの例
まずはじめに群の定義から復習しましょう。
定義
$G$を集合、演算と呼ばれる $\cdot$ を写像$\ \cdot:G\times G\to G$とする。組$\left<G,\ \cdot\right>$が次の条件を満たすとき群であるという。ここで$x\cdot y := \ \cdot(x, y)$とする。
1. 任意の元$x, y, z\in G$に対して$(x\cdot y)\cdot z = x\cdot (y\cdot z)$が成り立つ。(結合律)
2. ある元$e\in G$が存在して、任意の元$x\in G$に対して$x\cdot e = e\cdot x = x$が成り立つ。(単位元の存在)
3. 任意の元$x\in G$に対してある元$y\in G$が存在して$x \cdot y = y \cdot x = e$が成り立つ。(逆元の存在)条件 2. ,3. の$e$を単位元、3. の$y$を$x$の逆元という。
これからは$x\cdot y$を$xy$と省略し、$x$に$y$を右から掛ける($y$に$x$を右から掛ける)ということにします。さらに、群$\left<G,\ \cdot\right>$を$G$と表すことにします。また、結合律から$x(yz)$と$(xy)z$は同一なので$xyz$と表します。
ここで群の性質として、単位元と逆元は一意です。
命題
群$G$の単位元および元$x\in G$の逆元は一意である。
(証明)
まず、単位元について見る。$e$と$e'$を単位元とする。このとき$xe=x, xe'=x$であるから$$\tag{1} xe = xe'$$ ここで群の定義より$x$の逆元$y$が存在するから、$(1)$式の両辺の左から$y$を掛ければ、
$$\begin{aligned} yxe &= yxe' \\ ee &= ee' \\ e &= e \end{aligned}$$ を得る。
次に逆元について見る。$G$の元$x$の逆元を$y, y'$とする。定義から、$$\tag{3} xy = xy' = e.$$ もちろん、$e$は単位元である。両辺の左から$y$を掛ければ
$$\begin{aligned} yxy &= yxy' \\ ey &= ey' \\ y &= y' \end{aligned}$$ を得る。$\square$
単位元、$x$の逆元の一意性が判明したため、それぞれに専用の記号$1$と$x^{-1}$を与えようと思います。この記号を用いて群の定義を書き直すと次のようになります。
群の再定義
集合$G$が群であるとは、演算$\ \cdot:G\times G \to G$が定まっていて次の条件を満たすことをいう。
1. 任意の元 $x, y ,z \in G$ に対して $(xy)z = x(yz)$ が成り立つ。
2. 単位元と呼ばれる元 $1\in G$ が存在して、任意の元 $x\in G$ に対して
$x1 = 1x = x$ が成り立つ。
3. 任意の元 $x\in G$ に対して $x$ の逆元 $x^{-1}$ が存在して $xx^{-1} = x^{-1}x = 1$ が成り立つ。
ここで群の例をいくつか挙げておきます。4番の例は後で使うので覚えておいてください。
例
1. 整数の集合$\mathbb{Z}$と加法$+$の組$\left< \mathbb{Z}, + \right>$は群となる。
2. 自然数 ($0$を含む) の集合$\mathbb{N}$と乗法$\times$の組$\left< \mathbb{N}, \times\right>$は群となる。
3. 整数の集合$\mathbb{Z}$と乗法$\times$の組$\left< \mathbb{Z}, \times \right>$は群となる。
4. $p$の倍数 (負数含む) の集合 $p\mathbb{Z}$ と 加法$+$の組$\left< p\mathbb{Z}, +\right>$は群となる。
5. $x$に関する実数係数多項式の集合$\mathbb{R}[x]$と乗法$\times$の組$\left< \mathbb{R}[x], \times \right>$は群となる。
6. $\mathbb{R}$上の単調な関数 $f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ の集合 $\text{Func}$ と関数の合成 $\circ$ の組$\left< \text{Func}, \circ \right>$は群となる。
合同式を考える
群論のモチベーションの1つに、整数問題に有効な合同式の性質について調べるというものがあります。合同式とは次のような式のことです。
$$\begin{aligned} m \equiv n \pmod p \end{aligned}$$
ここで$m, n$は整数、$p$は自然数です。この状況を「$m$と$n$は$p$を法として合同である」と言います。上の式は
「と$n$を$p$で割った余りが等しい」
という意味を持ちます。この文を数式に落とし込んでみます。
まず、を$p$で割った商を、余りをとします。$n$についても同様に商を$r_n$、余りを$a_n$とします。このとき、はを使って
と表せるのでした。よって、$a_m$について整理すると、
同様に$n$の場合、$a_n$は
$$a_n = n - pr_n$$
となります。今、でしたから、
$$\begin{aligned}
m-pr_m &= n - pr_n \\
m - n &= p(r_m - r_n)
\end{aligned}$$
を得ます。ここで右辺に注目すると、右辺は$p$の倍数 ($-2p$などの負数も含む) となっています。合同であるならば$m-n$が$p$の倍数であることが分かりました。逆に、ここまでの議論を遡ることで$m-n$が$p$の倍数ならば$m$と$n$は$p$を法として合同であることが分かります。よって、これを定義に使うことが出来ます。
定義
$m, n$を整数とする。$m-n$が自然数$p$の倍数であるとき、と$n$は$p$を法として合同であるといい、$$\begin{aligned} m \equiv n\pmod p\end{aligned}$$ と表す。このとき、$m, n$を$p$でそれぞれ割った余りは等しい。
この定義を群に対して書き換えたものが 剰余類 と呼ばれるものです。
合同式を群に落とし込むために、上の議論がどのような群で行っていたかを考えます。$m, n$は整数だったので、土台となる集合は$\mathbb{Z}$でしょう。また、定義に$m-n$を使っているため演算は加法$+$ (群は逆元を持つので$m-n = m + (-n)$とすれば良い) であれば良さそうです。では、$m-n$が$p$の倍数であることはどうやって表せばいいのでしょうか?
$m-n$が$p$の倍数の集合 $p\mathbb{Z}$ に含まれているならば$m-n$は当然$p$の倍数ですから、このようにして表現すれば良さそうです。
以上を踏まえて合同式の定義を書き換えたものが次の定義です。
定義
$m, n\in \mathbb{Z}$とする。自然数$p$に対して $m-n\in p\mathbb{Z}$ であるとき、と$n$は$p$を法として合同であるといい、$$\begin{aligned} m \equiv n\pmod p\end{aligned}$$ と表す。
剰余類と剰余群
さて、ここからいよいよ群$\left<G, \cdot\ \right>$の剰余類の定義をしていきます。上の定義は、$G=\mathbb{Z}, \ \cdot=+$の場合でしたから、$\mathbb{Z}$を$G$に、$+$を$\ \cdot$に書き換えれば良さそうです。唯一の問題点は$p\mathbb{Z}$をどのように書き換えるかです。
ここで大胆なことをしてみましょう。$p\mathbb{Z}$は群でした。そこで$p\mathbb{Z}$を適当な群$H$に書き換えてしまうのです。ただし、$H$を$G$と全く関係なしに選ぶと合同式の性質が失われる可能性があります。そこで、$\mathbb{Z}$と$p\mathbb{Z}$の関係に注目すると、どちらも群でしかも $p\mathbb{Z} \subseteq \mathbb{Z}$ が成り立っています。また、2つの群の演算も一緒です。これを定義に盛り込みましょう。つまり $H\subseteq G$かつ$H$と$G$の演算は同じという制約を貸します。また、集合として扱った方が都合がいいので合同な元どうしの集合を剰余類とします。
では、剰余類の定義を示します。
定義
$G, H$を同じ演算を持つ群とし、$H\subseteq G$ とする。$G$における$H$の右剰余類とは次の集合$ x H $のことである。ここで$x\in G$である。$$\begin{aligned} xH :&= \left\{y \in G | xy^{-1}\in H \right\} \\ &= \left\{ y \in G|x^{-1}y\in H \right\} \\ &= \left\{ xy \in G|y\in H \right\} \end{aligned}$$ また、$G$における$H$の左剰余類とは次の集合$ H x $のことである。
$$\begin{aligned} Hx :&= \left\{y \in G | y^{-1}x\in H \right\} \\ &= \left\{ yx \in G|y\in H \right\}\end{aligned}$$ また、$G, H$が共に群で$H\subset G$を満たし、両方の演算が一致するとき$H$は$G$の部分群であるという。
上の定義の通り、剰余類は右剰余類と左剰余類に分かれます。これは一般の群$G$において $xy \mathrlap{\,/}{=} yx$ の可能性があるからです。($\mathbb{Z}$では$m+n = n+m$ですからこの区別はありません。)
実際に$G = \mathbb{Z}, H = 3\mathbb{Z}$として$G$における$H$の剰余類を計算してみましょう。なお、剰余類を$n\ 3\mathbb{Z}$と書くとややこしいので、ここでは$n+3\mathbb{Z}$のように表します。
$$\begin{aligned} 0 + \mathbb{3Z} &= \left\{ 0 + n | n \in 3\mathbb{Z} \right\} \\ &= \left\{ 0, 3, -3, 6, -6, \cdots \right\} \\ &= \mathbb{3Z} = H \\ \\ 1 + \mathbb{3Z} &= \left\{ 1 + n | n \in 3\mathbb{Z} \right\} \\ &= \left\{ 1, 4, -2, 7, -5, \cdots \right\} \\ \\ 2 + \mathbb{3Z} &= \left\{ 2 + n | n \in 3\mathbb{Z} \right\} \\ &= \left\{ 2, 5, -1, 8, -4, \cdots \right\} \\ \\ 3 + \mathbb{3Z} &= \left\{ 3 + n | n \in 3\mathbb{Z} \right\} \\ &= \left\{ 3, 6, 0, 9, -3, \cdots \right\} \\ &= 3\mathbb{Z} = H \end{aligned}$$
計算してみると、各剰余類の元どうしが$3$を法として合同であることが分かると思います。以上で、合同式の概念を群に持ち込むことに成功しました。
そんな剰余類ですが、よい剰余類の集合は群になります。実際、上の剰余類の集合 $\mathbb{Z}/3\mathbb{Z} = \left\{ 0 + \mathbb{3Z}, 1+\mathbb{3Z}, 2 + \mathbb{3Z} \right\}$ は演算 $\bar{+}$ を
$$(n+\mathbb{3Z}) \bar+ (m + \mathbb{3Z}) = (n + m) + \mathbb{3Z}$$
とすることで群になります。(単位元は $0+\mathbb{3Z}$, $-(1 + \mathbb{3Z}) = (2+\mathbb{3Z}), -(2+\mathbb{3Z}) = (1+\mathbb{3Z})$ です。)
では、よい剰余類とはどんな剰余類なのでしょうか。
これに答えるためにまず剰余類どうしの演算については考えます。そこで、上で挙げた$\mathbb{Z/3Z}$を参考にして一般の$G$の部分群$H$の右剰余類に対する演算を次のように定めます。($x, y\in G$)
$$xH\ \cdot\ yH = (xy)H$$
つまり、剰余類の演算は$G$の演算を自然に拡張したものを使うということです。左剰余類に対しても同様に定めます。さっそく、剰余類が群になるかどうかを考えていきたいのですが、その前に確かめるべきことがあります。それは、今定めた演算がキチンと写像であることです。どういうことかと言いますと、$x, y, z\in G$のとき、$xH = yH$だったとしても、$(xz)H \not= (yz)H$である可能性があります。そうすると、同じもの $xH, yH$ を $zH$ に掛けたのに$(xz)H$と$(yz)H$が異なるというのはとても困ります。
このように、群の写像を剰余類に拡張するときには、その拡張によって矛盾が起きないことを確かめる必要があります*1。しかし、じつはこのままでは上の剰余類の演算は well-difined ではないのです。
試してみましょう。示すべきことは以下の通りです。
命題
$G$を群、その部分群を$H$とする。$x, y, z\in G$で、$xH = yH$のとき$$(xz)H = (yz)H$$
$(xz)H \subset (yz)H$ を示そうとしてみます。 $w\in(xz)H$ とすると $w=(xz)h$を満たすような$h$が存在します。今、 $xH = yH$ でありましたから $x \in yH$ 。よって $y^{-1}x = h' \in H$ 。よって $(xz)h = (yh'z)h$ 。うーん、ここからはどうしようもなさそうです。逆に $yx^{-1}=h'$ としても $(xz)h = (yh'^{-1}z)h$となってしまいどうしようもありません。
これを解決するために$H$に制限を課して、考える剰余類をよい剰余類だけに絞ります。それは
任意の元$x\in G$に対して
$$xH = Hx$$
が成立することです。このような $H$ を $G$ の正規部分群といいます。(同値な定義は多数あるので良かったら調べてみてください。)
こうすると、 $zH=Hz$ ですから、 $zh=h'z\in Hz$ となるような$h'$が存在します。ゆえに $w=x(zh)=x(h'z)=(xh')z$ 。同様に、$xh'=h''x\in Hz$となるような$h''$が存在するので$w=(xh)z=(h''x)z$。ここで $y^{-1}x=h'''$とすると、 $w=(h''x)z=(h''h'''y)z=(h''h''')yz$ 。今、$H$は群なので$h''h'''\in H$ 。よって$w\in H(yz) = (yz)H$ を得られます。
実は $(zx)H = (zy)H$ は$H$が正規部分群でなくても成り立つのですが、詳細は読者への演習問題とします。
そんなわけで、剰余類に元の群の演算を拡張するには部分群が正規部分群である必要があります。さて、演算を安心して使えることが分かったので、これが群になるかどうか確認していきます。
命題
群$G$, その正規部分群を$H$とする。$H$の剰余類全ての集合 $G/H$ と $G$ の演算を $G/H$ 上に拡張した演算 $\cdot$ の組$\left<G/H,\ \cdot\ \right>$は群となる。
(証明)
まず、結合律が成り立つことを示す。
これは$xH, yH, zH \in G/H$に対して$$(xH \cdot yH)zH = (xy)H \cdot zH = (xy)zH = x(yz)H = xH(yH\cdot zH)$$ より従う。
次に単位元の存在を示す。
$h = 1H\in G/H$ は 任意の元 $xH\in G/H$ に対して$$\begin{aligned}1H\cdot xH = &(1x)H = (x1)H = xH\cdot 1H \\ &(1x)H = (x)H = xH \end{aligned}$$ となるから、 $1H$ は $G/H$ の単位元である。
最後に逆元の存在を示す。
任意の元 $xH\in G/H$ に対して$x^{-1}H$ は$$\begin{aligned} xH\cdot x^{-1}H = &(xx^{-1})H = (x^{-1}x)H = x^{-1} H \\ &(xx^{-1})H = (1)H = H \end{aligned}$$ となるから、$x^{-1}H$は$xH$の逆元である。
以上で $G/H$ は群になることが分かりました。この群を $G$ の $H$ による剰余群 (商群) といいます。僕は「じーおーばーえいち」と言ったりしますが何がスタンダードなのかは分かりません。
剰余環
剰余群の環バージョンである剰余環を考えるために、環とそのイデアルと呼ばれるものを紹介します。
定義
集合$R$と、$R$上の二つの演算 $+$ と $\times$ の組 $\left< R, +, \times \right>$ が環であるとは、組$\left< R, +\right>$が可換群 *2であり、組$\left< R, \times \right>$ が群であって、 任意の元 $x, y, z \in R$ に対して$$\begin{aligned} (x+y)z = xz + xy \\ z(x+y) = zx + zy\end{aligned}$$ が成り立つことをいう。
組 $\left< R, +, \times \right>$ を $R$ と表すことにします。また、組$\left< R, \times \right>$が可換群であるとき、$R$を可換環といいます。今回は可換環についてだけ考え、環といったら可換環のことを指すこととします*3。また、環の $+$ の単位元を $0$ 、 $\times$ の単位元を $1$ と表すことにします。
記号を分けたように、一般に $+$ と $\times$ の単位元は異なります(一致している場合、 $R$ は自明な環と呼ばれます)。
定義
環 $R$ のイデアル $I$ とは、$R$ の部分群であって、任意の元 $x\in R$ と $a \in I$ に対して $xa \in I$
今、$I$は$R$の部分群で$R$は可換環なので$I$は可換群です。よって$I$は正規部分群です。
さて、上で定義した群$G$を環$R$に、正規部分群$H$を$R$のイデアル$I$に置き換えた剰余群 $R/I$ を剰余環といいます。また、$a\in R$ に対して剰余類 $a + I$ を $\bar a$ と表すことにします。
ここで演算は加法$+$です。「群なのに環?」と思うかもしれませんが、実は $R$ の演算 $\times$ を $R/I$ に自然に拡張することによって $R/I$ は環となります。すなわち、
$a, b \in R$ に対して $\bar a\times \bar b := \overline{ab}$
とするということです。剰余環 $R/I$ が実際に環となることの確認は読者への演習問題とします。
2^(1/2^(1/2^(...)))はどんな値?
この記事は、「日曜数学 Advent Calendar 2019」 の21日目の記事です。
昨日はasangi_a4acさんの「106以上の実数」でした。 冬の寒さに匹敵するホラーで巨大な記事でした。
こんにちは、トッチです。普段は電気系の高専生に擬態しながら趣味で環論や力学系について勉強しています。今回は力学系の話題になります。
退屈な授業での発見
夏休みの少し前、退屈な電磁気学の授業で関数電卓を使って遊んでいたときのことです。私は以下の数式を関数電卓に打ち込みました。
$$\sqrt[\text{Ans}]{2}$$ ここで$\text{Ans}$には前の計算結果がそのまま入ります。十分多く「=」ボタンを押したところ、以下の数列が出現しました。
$$\dots,1.559610469, 1.559610469, 1.559610469, 1.559610469,\dots$$ この数字は一体なんだろう?そんなわけでそれから私はこの数式と数列について色々調べました。
漸化式と2つの性質
私が電卓に打ち込んだ数式をもう少しキチンと表すと以下のようになります。
$$ \tag{1} x_{n+1} = \sqrt[x_n]{a}\ (\text{ただし}a\text{は0より大きい実数})$$
そうです。漸化式です。
私はこの漸化式について関数電卓を使って調べ、2つの性質を実験的に見つけました。
- $1 \leq a \leq 10$程度の範囲では$x_n$は最終的にある1つの値に収束する。
- $a$がそこそこ大きいとき(20以上)、$x_n$は最終的に2つの値を交互にとるように収束する。
というわけで、この2つの性質について、収束する値や$a$の範囲を調べるのが今回の目標です。
固定点の値と吸引的になる条件
$f_a(x)=\sqrt[x]{a}$とします。ここでは、性質1.がどのような値に収束するかについて調べるために$p=f_a(p)$を満たすような$p$について考えていきます。この$p$を$f_a$の固定点と呼びます。ということで、早速$p=f_a(p)$を解いていくと、
$$\begin{aligned} p&=\sqrt[p]{a} \\ &= a^{1/p} \end{aligned}$$ 両辺を$p$乗して、
$$\begin{aligned} \tag{2} p^p=a \end{aligned}.$$
この解を$p_a$とします。解析に必要な情報はここで十分なので、これ以上詳しくは調べません。
「もっと知りたい!」という方は以下の動画を見ると幸せになると思います。
パラメータ$a$と固定点$p_a$の関係は図1に示したグラフのようになります。
式$(1)$から$a$の最低値は$e^{-\frac{1}{e}}$であることが分かります。また、$1 \leq a$のとき、固定点は1つあり、$e^{-\frac{1}{e}} \leq a < 1$のとき、固定点は2つあることが分かります。
さて、性質1で、$a$がどんなときに収束していくかを見るために$x_i$と$p_a$の差$\epsilon_i=x_i-p_a$について考えます*1。そのような$a$では、$\epsilon_i$が$0$に収束します。$f_a$を$p_a$中心で一次近似すると、
$$\begin{aligned}x_{i+1} = f_a(x_i) &= p_a - \frac{a^{1/p_a}}{p_a^2}\ln (a)(x_i-p_a) + O((x_i-p_a)^2) \\ \therefore \epsilon_{i+1} &= -\frac{a^{1/p_a}\ln a}{p_a^2}\epsilon_i + O(\epsilon_i^2)\end{aligned}$$ を得ます。$a^{1/p_a}=p_a^{p_a\cdot1/p_a}=p_a$であることに注意し、$\epsilon_i$に比べて$\epsilon_i^2$が十分に無視できるとすれば、
$$\left|\frac{\ln a}{p_a}\right| < 1$$ のとき、$\epsilon_i\to0$となります。よって、$|\ln a|<p_a$を満たす$a$は性質1を満たすことが分かりました。ここで横軸を$x$, 縦軸を$a$として$x = |\ln a|$, $x = p_a$のグラフを描くと、図2のようになります。
ここで$x = |\ln a|$, $x = p_a$をそれぞれ変形すると$a = e^{\pm x}$, $a = x^x$ですから、図2より、$|\ln a|<p_a$を満たす$a$は、
$$\begin{aligned} a_1 &= e^{-x} = x^x,\\a_2 &= e^{x} = x^x \end{aligned}$$ を用いて$a_1 < a < a_2$を満たすことが分かります。実際に$a_1, a_2$について計算すると、
$$a_1 = e^{-\frac{1}{e}}, a_2 = e^e$$
となります。ここで、図2をもう一度みると、$e^{-\frac{1}{e}} \leq a < 1$のとき、2つある固定点のうち、収束するのは必ず大きい方であることが分かります。
今までは局所的な軌道が$p_a$に収束することについて言及してきました。ここに付け加えると、上記の範囲の$a$において、$x_{n+1} = f_a(x_n)$にクモの巣図法を適用すれば、任意の初期値$x_0 > 0$に対して漸化式$(1)$の固定点$p_a$に収束することが分かります。以上のことを纏めたのが次の命題です。
命題 1.
漸化式$x_{n+1} = \sqrt[x_n]{a}$は0より大きい任意の初期値$x_0$に対して$e^{-\frac{1}{e}} < a < e^e$のとき、$p_a^{p_a} = a$を満たす$p_a$のうち、もっとも大きいものに収束する。
余談ですが、$x^x=a$を満たす$x$を$a$の超平方根(super square root)といいます。つまり、上記の範囲の$a$においては漸化式$x_{n+1}=\sqrt[x_n]{a}$を電卓でポチポチと計算すると$a$の超平方根が計算出来るのです。
2周期点の値
続いて$p_{n+2} = f_a(p_{n}), q_{n+2} = f_a(q_n)$を満たす点─2周期点─について調べていきます。今回知りたいのは$p \mathrlap{\,/}{=} q$の場合なので、これを仮定します(このような場合、$p, q$は素周期2であると言います)。そのような点では$p=f_a(q), q = f_a(p)$となります。よって、次の連立方程式
$$\begin{aligned} p = \sqrt[q]{a}, q = \sqrt[p]{a} \end{aligned}$$ の解$(p, q)$とその解が存在する$a$の条件について調べていけばよいことになります。連立方程式を整理すれば、
$$ \tag{3} p^q = q^a = a$$ を得ます。これを解くために$q = tp$と置きます。ここで$t\mathrlap{\,/}{=} 1$とします。これを式$(3)$に代入すれば、
$$(p^{t})^p = (tp)^p.$$ 両辺を$\frac{1}{p}$乗すれば、
$$p^t = tp.$$ さらに両辺を$p$で割り、$\frac{1}{t-1}$乗すれば、
$$p = t^{\frac{1}{t-1}}$$ を得ます。$q = tp$でしたから、$q = t^{\frac{t}{t-1}}$です。また式$(3)$より$a = (t^\frac{1}{t-1})^{t^{\frac{t}{t-1}}} = t^{\frac{t^\frac{t}{t-1}}{t-1}}$です(肩に肩が乗っかってんのかい)。$u=\frac{1}{t}$とすれば、$t^{\frac{1}{t-1}} = u^{\frac{u}{u-1}}$となりますから、曲線$y = p(t)$と$y=q(t)$は$0<t<\infty$で動かせば一致します。横軸を$a$、縦軸を$p$としてグラフを描くと図3のようになります。どうやら$p$が存在する$a$には下限が存在し、上限は存在しないようです。
補題1.
$$\lim_{t\to\infty} t^{\frac{t^{\frac{t}{t-1}}}{t-1}} = \infty, \lim_{t\to0^+} t^{\frac{t^{\frac{t}{t-1}}}{t-1}} = \infty$$
(証明)
Wolfram Alphaの結果より。(めんどい)
下限については、2変数関数の条件付き極値問題 (Lagrangeの未定乗数法)として捉えれば解けます。
補題2. 正の実数$p, q$に対して
$$a = p^q = q^p$$ は下限値$a = e^e$をもつ。
(証明) $a = p^q = q^p$ の各辺の対数を取り、$\log a = q\log p = p\log q$の最小値について見る。
$f(p, q) = \ln a = q\ln p$,$g(p, q) = q\ln p - p\ln q$とする。$$\begin{aligned} f_p &= q/p, \\ f_q &= \ln p, \\ g_p &= q/p - \ln q, \\ g_q &= \ln p - p/q\end{aligned}$$
であるから、
$$\begin{aligned} f_p/g_p &=\frac{q/p}{q/p - \ln q}, \\ f_q/g_q &= \frac{\ln p}{\ln p -p/q}. \end{aligned}$$ ここで$f_p/g_p = f_q/g_q$と$g = 0$を同時に満たす$p, q$について調べる。
$$\begin{aligned} f_p/g_p &= f_q/g_q \\ (\ln p -p/q)q/p &= (q/p - \ln q)\ln p \\ \tag{4} 1 &= \ln p \cdot\ln q \end{aligned}$$
ここで、$g = 0$すなわち$\frac{\ln p}{p} = \frac{\ln q}{q}$と式$(4)$を組み合わせれば、
$$\begin{aligned} \frac{p}{\ln p} = e^{\frac{1}{\ln p}} \ln p \end{aligned}$$
これを頑張って解くと(増減表を用いた解き方しか思いつきませんでした。)、$\ln p = 1$、すなわち$p = e$を得る。同様に$q=e$となるので、$g(p, q)$は$x = y = e$で極値をとる。曲線$f(p, q) = 0$は端点を持たないので、極値のどれかが最小値、もしくは最大値となる。今、補題1.から$g(p, q)$は最大値を持たず、極値は$x = y = e$ただ一つなので、$g$は$g(e, e)$で最小値となる。(正確には$p\mathrlap{\,/}{=} q$なので$g(e, e)$は$g(p, q)$の下限。)
さらに、性質1のときと同様$f_a^2(x)$に蜘蛛の巣図法を適用すれば、$a > e^e$のとき、どんな初期値$x_0 > 0$からでも漸化式$x_{n+1}=f_a(x_n)$は2周期点$p, q$に交互に収束することが分かります。以上をまとめると次のようになります。
命題2.
任意の$a > e^e$に対して$x_{n+1} = \sqrt[x_n]{a}$は素周期2の周期点を持ち、任意の初期値$x_0$はその周期点に収束する。
ここまで、$a$に対する固定点と2周期点について調べてきました。まとめとして、次の図に$a$と固定点、2周期点の関係を示します。
図を見ると、2周期点が固定点の上下にあることがよく分かります。また、$a\to\infty$のとき2周期点は$0$と$+\infty$になることが分かります。
感想および余談
感想としましては、授業の暇つぶしからこんなに没頭できる問題と出会えてとても楽しかったです。次はどんな問題に出会えるかな?
それから、今回調べた漸化式に似たもので、すでに調べられているものがあるので紹介しておきます。
www.ajimatics.com
neqmath.blogspot.com
謝辞
今回の問題を一緒に取り組んでくれた友人達にここで感謝の意を述べさせていただきます。また、
補題2. について助言をくださった NKSΣさん(@nkswtr)、本当にありがとうございました。
夏休み中にやり残したこと
最後に、命題1つとそれに伴う系を示しておわりにしたいと思います。
命題3.
漸化式$x_{n+1} = f_a(x_n)$は素周期3以上の周期点を持たない。(証明)
$f_a(x) = \sqrt[x]{a}$が$(0, \infty)$上で単調増加であることを利用して背理法でしめす。$y = f_a(x), z = f_a(y), x = f_a(z)$とし、$x < y$とする。$f_a$は単調増加であるから、$$f_a(x) = y < z = f_a(y).$$ 同様に、
$$f_a(y) = z < x = f_a(z).$$ よって、$y < x$を得るがこれは仮定と矛盾する。$y < x$と仮定した場合も同様である。これにより素周期3の場合は示された。素周期が4以上の場合も同様である。
系.
正の実数$x, y, z$に対して、$$x^y=y^z = z^x$$ が成り立つとき、$x = y = z$である。
勿論、上の系は一般の場合$x_{1}^{x_2} = x_{2}^{x_3} = \cdots = x_{n-1}^{x_n} = x_{n}^{x_1}$に対して拡張できます。
明日はunaoya さんの「保型形式について何か書きます」です。
【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.6 (26日目)
前書き
この記事はRobert L. Devaney著
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」
- 作者: Robert Devaney
- 出版社/メーカー: Westview Press
- 発売日: 1989/01/21
- メディア: ハードカバー
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§1.6の演習問題
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」には演習問題の答えが付属していません。そのため、ここに載せた答案は間違っている可能性があります。間違い等に気づきましたらお知らせくださると助かります。
4.
$\Omega'$の全ての列は$\Omega_2$の列で、$s_j=0$ならば$s_{j+1}=1$を満たすとする。別の言い方をすれば、$\Omega'$の全ての列は$"0"$が$2$つ以上連続して出現しない。
1. $\Omega'$は$\omega$に対して不変であり、$\Omega$は$\Omega_2$の閉部分集合であることを示せ。
2. $\omega$の周期点は$\Omega'$で稠密であることを示せ。
3. $\Omega'$で稠密である軌道が存在することを示せ。
4. $\Omega'$において$\omega,\omega^2,\omega^3$の固定点はいくつあるか?
5. $\omega^n$の固定点の数を表す漸化式を見つけよ。ただし、$\omega^{n-1}, \omega^{n-2}$の固定点の数を用いよ。解答
1.
$\bold s\in\Omega'$に対して$\bold t=(t_0s_0s_1s_2\dots)\in\Omega'$は$\omega(\bold t)=\bold s$であるから、$\Omega'$は$\omega$に対して不変。
$\Omega'$の点列$\bold{s_0, s_1,\dots}$は$\bold{s'}=(s_0's_1'\cdots)$に収束するとする。このとき各$n$に対して$s_n'=s_n$を満たすような$\bold s_m$が存在する。$\bold s'$が$\Omega'$に属していないとすると、ある$j$が存在して$s_j=0$かつ$s_{j+1}=0$を満たす。しかし、そのような項が存在する$\bold{s}_n$は存在しない。よって矛盾。よって$\Omega'$の任意の点列の極限は$\Omega'$に属し、$\Omega'$は閉集合。2.
$\theta_n$を$\bold s$の$n$個目の$0$の項までを繰り返す列とする。ただし繰り返すときに$n$個目の$0$は含めない。e.g.) $\bold s=(0110111010101111\cdots)$に対して$\theta_3 = (0110111\ 0110111\ \cdots)$である。このとき$\theta_n\to\bold s.$
3.
$s^\ast=(\underbrace{01 11}_{1組}|\underbrace{011\ 101\ 111}_{2組}|\underbrace{0101\ 0111\ 1011\cdots}_{3組}|\cdots)$とする。つまり$s^\ast$を$0$が2つ以上連続しない数列の後ろに"1"を付けたもののみで構成された列とする。このとき$s^\ast$の軌道は任意の$\bold s\in\Omega'$を含んでいる。
4.
$\omega$の不動点: $(1\ 1\ 1\cdots)$で$1$つ
$\omega^2$の不動点: $(01\ 01\ 01\cdots),\ (10\ 10\ 10\cdots)$で$2$つ。
$\omega^3$の不動点: $(011\ 011\ 011\cdots),\ (101\ 101\ 101\cdots),\ (110\ 110\ 110\cdots),\ (111\ 111\ 111\cdots)$の$4$つ。5.
$\omega^n$の固定点の数$p_n$は$\omega^{n-1},\omega^{n-2}$のものを$p_{n-1},p_{n-2}$と表せば$p_n=p_{n-1}+p_{n-2}$となる。
理由として、$\omega^{n-1}$の固定点の繰り返している1フレーズに$"1"$を、$\omega^{n-2}$の固定点の繰り返している1フレーズには以下の規則で$"01"$または$"10"$を追加する。 1. フレーズが$0s_1s_2\cdots s_{n-2}$と$0$から始まっている場合には$"01"$を追加する。 2. それ以外の場合は$"10"$を追加する。このように改変されたフレーズを持つ点はどれも被ることがないため、その個数は$p_{n-1}+p_{n-2}$となる。あとはこれが$\omega_n$の固定点を全て網羅していることを示せばよいのですが、証明を思いつきませんでした。思いつき次第追記します。
5.
$\Omega_N$は自然数$1,2,\dots,N$の全ての数列で構成されているとする。$\Omega_N$上には自然なシフト写像が存在する。
1. $\Omega_N$において$\omega$はいくつの周期点を持つか?
2. $\omega$は$\Omega_N$に稠密な軌道を持つことを示せ。証明
1.
周期$n$の周期点は長さ$n$の$N$種の文字で構成された列を繰り返すことによって得られるため、その数は$N^n$。
2.
$\bold s^\ast=(0\ 1\cdots N|00\ 01\ 02\cdots N(N-1)\ NN|\cdots)$とすれば、$\bold s^\ast$の$\omega$による軌道は$\Omega_N$において稠密。
6.
$\bold s\in\Omega_2$とする。$\bold s$の安定集合$W^s(\bold s)$を$i\to\infty$のとき$d(\omega^i(\bold s),\omega^i(\bold t))\to0$となるような$\bold t$の集合として定義する。そこで、$W^s(\bold s)$の全ての列を識別せよ。
解答
$\ast$を$0$か$1$のどちらも取りうるものとする。$W^s(\bold s)$の元は
$$(s_0s_1s_2\cdots),(\ast s_1s_2\cdots), (\ast \ast s_2s_3\cdots),\dots$$
今日の数学はここまで。続きはまた明日。
【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.6 (25日目)
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§1.6の演習問題
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」には演習問題の答えが付属していません。そのため、ここに載せた答案は間違っている可能性があります。間違い等に気づきましたらお知らせくださると助かります。
1.
$$\begin{aligned} \bold s=(001\ 001\ 001\ \cdots) \\ \bold t=(01\ 01\ 01\ 01\ \cdots) \\ \bold r=(10\ 10\ 10\ 10\ \cdots)\end{aligned}$$ とする。次を計算せよ。
1. $d(\bold{s, t})$
2. $d(\bold{t, r})$
3. $d(\bold{s, r})$解答
- $|s_i-t_i|$により得られる数列は$0,1,1,1,0,0,0,1,1,1,0,0,0,\dots$であるから
$$d(\bold{s,t})=\left(\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}\right)\sum^\infty_{i=0}\left(\frac{1}{2^{6i}}\right)=\frac{8}{9}$$ 2. $|t_i-r_i|$により得られる数列は$1,1,1,\dots$であるから
$$d(\bold{t, r})=\sum^\infty_{i=0}\frac{1}{2^i} = 2$$ 3. $|s_i-r_i|$により得られる数列は$1,0,0,0,1,1,1,0,0,0,1,1,1,0,0,0,\dots$であるから
$$d(\bold{s,r})=\left(1+\frac{1}{16}+\frac{1}{32}\right)\sum^\infty_{i=0}\left(\frac{1}{2^{6i}}\right)=\frac{10}{9}$$
2.
$\omega$にたいして、$\Omega_2$内の周期$3$の周期点となる全数列を見つけ出せ。どの数列らが$\omega$の下での同じ軌道に存在するか?
解答
長さが$3$の$0$と$1$で構成された文字列が繰り返される数列がその周期点である。つまり
$$(000\ 000\cdots), (001\ 001\cdots), (010\ 010\cdots), \dots,(110\ 110\cdots),(111\ 111\cdots)$$ の全$8$個である。同じ軌道に存在する数列は
$$(001\ 001\cdots), (010\ 010\cdots), (100\ 100\cdots)$$ と
$$(011\ 011\cdots), (110\ 110\cdots), (101\ 101\cdots)$$ の二組である。
3.
周期$4$と周期$5$について演習問題2を再度解け。
解答
・周期$4$について
長さが$4$の$0$と$1$で構成された文字列が繰り返される数列がその周期点である。つまり$$(0000\ 0000\cdots), (0001\ 0001\cdots), (0010\ 0010\cdots), \dots,(1110\ 1110\cdots),(1111\ 1111\cdots)$$ の全$16$個である。同じ軌道に存在する数列は
$$\begin{aligned} (0010\ 0010\cdots), (0010\ 0010\cdots)&, (0100\ 0100\cdots), (1000\ 1000\cdots)\\ \\ (0011\ 0011\cdots), (0110\ 0110\cdots)&, (1100\ 1100\cdots), (1001\ 1001\cdots)\\ \\ (0111\ 0111\cdots), (1110\ 1110\cdots)&, (1101\ 1101\cdots), (1011\ 1011\cdots)\\ \\ (0101\ 0101\cdots)&, (1010\ 1010\cdots)\end{aligned}$$ の$4$組である。
・周期$5$について
長さが$5$の$0$と$1$で構成された文字列が繰り返される数列がその周期点である。つまり$$(00000\ 00000\cdots), (00001\ 00001\cdots), (00010\ 00010\cdots), \dots,(11110\ 11110\cdots),(11111\ 11111\cdots)$$ の全$32$個である。同じ軌道に存在する数列は
$$\begin{aligned} &(00001\ 00001\cdots),(00010\ 00010\cdots),(00100\ 00100\cdots),(01000\ 01000\cdots),(10000\ 10000\cdots)\\ \\ &(00011\ 00011\cdots),(00110\ 00110\cdots),(01100\ 01100\cdots),(11000\ 11000\cdots),(10001\ 10001\cdots) \\ \\ &(00111\ 00111\cdots),(01110\ 01110\cdots),(11100\ 11100\cdots),(11001\ 11001\cdots),(10011\ 10011\cdots)\\ \\ &(01111\ 01111\cdots),(11110\ 11110\cdots),(11101\ 11101\cdots),(11011\ 11011\cdots),(10111\ 10111\cdots)\\ \\ &(00101\ 00101\cdots),(01010\ 01010\cdots),(10100\ 10100\cdots),(01001\ 01001\cdots),(10010\ 10010\cdots)\\ \\ &(01101\ 01101\cdots),(11010\ 11010\cdots),(10101\ 10101\cdots),(01011\ 01011\cdots),(10110\ 10110\cdots)\\ \\ &(01011\ 01011\cdots),(10110\ 10110\cdots) \end{aligned}$$ の全$7$組である。
今日の数学はここまで。続きはまた明日。
【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.6 (24日目)
前書き
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§1.6 SYMBOLIC DYNAMICS
記号力学系の基礎
この節でのゴールは前節で議論されたCantor 集合$\Lambda$上の2次関数の力学系の豊かな構造のモデルを与えることである。それをするために、$F$と完全に同型なモデル写像を設定する。最初のうちは、このモデルは人工的で直感的でないと見えるだろう。しかし、読み進めるにつれこのような記号力学系は$F$の力学系を完璧に記述しそれがもっとも単純で可能な方法であることが明らかになるだろう。
モデル写像の為の"空間"が必要である。この空間の点は$0$と$1$のみで構成される無限数列である。この数列が収束するかどうかは重要ではない。むしろ、ここでの重要な概念はそのような無限数列が空間内の一"点"を表していると想像することである。
定義 6.1
$\Omega_2={\bold{s}=(s_0s_1s_2\cdots)|s_j=0\text{ or }1}.$
$\Omega_2$は二つの記号$0$と$1$上の数列空間と呼ばれる。より一般的に、私たちは$0$と$n-1$に挟まれた整数の数列により構成される空間$\Omega_n$を考えることが出来る。$\Omega_2$の元は$(000\cdots)$や$(0101\cdots)$のような整数の文字列である。$\Omega_2$を距離空間にすることが出来る。二つの数列$\bold{s}=(s_0s_1s_2\cdots)$と$\bold{t}=(t_0t_1t_2\cdots)$に対して、それらの間の距離を
$$d(\bold{s}, \bold{t}) = \sum^\infty_{i=0}\frac{|s_i-t_i|}{2^i}$$ と定義する。$|s_i-t_i|$は$0$か$1$であるから、この無限級数はつぎの幾何級数で上から評価される。
$$\sum^\infty_{i=0}\frac{1}{2^i}=2$$ 従って、任意の二点の距離は収束する。 例えば、$\bold s = (000\cdots),\ \bold t=(111\dots)$ならば$d(\bold s, \bold t)=2.$ $\bold r=(1010\cdots)$ならば
$$d(\bold s,\bold t) = \sum^{\infty}_{i=0}\frac{1}{2^{2i}} = \frac{1}{1-\frac{1}{4}}=\frac{4}{3}.$$
命題 6.2
$d$は$\Omega_2$上の距離である。
証明
明らかに任意の$\bold s,\bold t\in\Omega_2$について$d(\bold s,\bold t)\geq0$である。また、任意の$i$に対し$s_i=t_i$のときに限り$d(\bold s, \bold t)=0$である。$|s_i-t_i|=|t_i-s_i|$であるから、$d(\bold s,\bold t)=d(\bold t,\bold s)$である。最後に$\bold{r, s, t}\in\Omega_2$であるならば、$|r_i-s_i|+|s_i-t_i|\geq|r_i-t_i|$より$d(\bold{r, s})+d(\bold{s,t})=d(\bold{r, t})$を得る。
命題 6.3
$\bold{s, t}\in\Omega_2$かつ$i=0,1,\dots,n$について$s_i=t_i$であるとする。そのとき$d(\bold{s, t})\leq 1/2^n$である。逆に言えば$d(\bold{s,t})\leq1/2^n$ならば$i\leq n$について$s_i=t_i$である。
証明
$i\leq n$について$s_i=t_i$であるならば
$$\begin{aligned}d(\bold{s,t})&=\sum^{n}_{i=0}\frac{|s_i-t_i|}{2^i} + \sum^\infty_{i=n+1}\frac{|s_i-t_i|}{2^i} \\ &\leq\sum^\infty_{i=n+1}\frac{1}{2^i} = \frac{1}{2^n}.\end{aligned}$$ 一方で、いくつかの$j\leq n$について$s_j\mathrlap{\,/}{=} t_j$ならば、
$$d(\bold{s,t})\geq\frac{1}{2^j}\geq\frac{1}{2^n}$$ となるはずである。その結果、$d(\bold{s, t})< 1/2^n$ならば$i<n$について$s_i=t_i$を得る(対偶)。
この結果の重要なことは二つの数列が互いに近いかどうかを瞬時に決定できることにある。直感的にこの結果は、二つの$\Omega_2$の2つの数列の近さは最初のいくつかの数項が一致しているかどうかで生み出されることを言っている。 今から、記号力学系のもっとも重要な要素であるシフト写像を定義する。
定義 6.4
シフト写像(shift map) $\omega:\Omega_2\to\Omega_2$を$\omega(s_0s_1s_2\cdots)=(s_1s_2s_3\cdots)$で定義する。 シフト写像は単純に数列の最初の項を"忘れ"、ほかの全ての項を左に一つ写す。明らかに、$\omega$は$s_0$は$0$か$1$のどちらかでしかないから、$\Omega_2$の2対1写像である。付け加えて言えば、上記で定義した距離では$\omega$は連続写像である。
命題 6.5
$\omega:\Omega_2\to\Omega_2$は連続である。
証明
$\epsilon-\delta$論法で示す。任意の$\epsilon>0$と$\bold s = s_0s_1s_2\cdots$をとる。$1/2^n <\epsilon$となるように$n$を選ぶ。$\delta=1/2^{n+1}$とする。もし$\bold t=t_0t_1t_2\cdots$が$d(\bold{s,t})<\delta$を満たすならば、命題6.3 より$i\leq n+1$について$s_i=t_i$を得る。それゆえ、$i\leq n$について、$\omega(\bold s)$と$\omega(\bold t)$の$i$番目の項は一致する。それゆえ$d(\omega(\bold s),\omega(\bold t))\leq1/2^n<\epsilon$である。
さて、$\omega$の完全に理解されることのできる単純な力学系を見ていこう。例えば、周期点は数列の完全に一致して繰り返している, i.e., $\bold s=(s_0\dots s_{n-1}\ s_0\dots s_{n-1}\ \dots)$のような形をしている数列である。それゆえ、$\Omega_2$には周期$n$の周期点が$2^n$個存在する。
最終的周期点も同様に豊富であり、見分けるのは簡単である。例えば、$(s_0\cdots s_n1111\cdots)$のような形の最終的に繰り返すようになる任意の数列は$\omega$の最終的固定点である。
$\omega$に関するもう一つの面白い事実として周期点の集合は$\Omega_2$上で稠密であることがある。$\text{Per}(\omega)$が稠密であることを証明するために、$\Omega_2$の任意の数列$\bold s=(s_0s_1s_2\cdots)$に収束するような周期点の数列を生成する必要がある。そこで、と定義する。命題6.3よりであるからとなる。
もちろん、$\Omega_2$には周期点または最終的周期点でないものも存在する。任意の繰り返さない数列は決して周期点とはならない。事実$\Omega_2$において、非周期数列の数は周期数列の数よりもかなり多い。付け加えて、$\Omega_2$には軌道が$\Omega_2$に稠密である非周期点が存在する。別の言い方をすれば、任意の与えられた$\Omega_2$の点にいくらでも近づくような数列が軌道内に存在するということである。それを見るために
$$\bold s^\ast=(\underbrace{0\ 1}_{1つ組}|\underbrace{00\ 01\ 10\ 11}_{2つ組}|\underbrace{000\ 001\ \cdots}_{3つ組}|\ \underbrace\cdots_{4つ組})$$
について考える。$\bold s^\ast$は長さが$\dots,n, n+1,\dots$の全ての$0$と$1$からなる数列を次々につなげて構成されている。明らかに、$\omega$のいくらかの反復を$\bold s^\ast$に適用することによって与えられた数列と任意の箇所で一致するような数列を生み出すことが出来る。稠密である軌道をもつ写像は位相推移的*1であると呼ばれる。
ここまでで出てきた$\omega$の性質をリストアップする。
命題 6.6
- $\text{Per}_n(\omega)$の濃度は$2^n$
- $\text{Per}(\omega)$は$\Omega_2$において稠密である。
- 軌道が$\Omega_2$において稠密であるようなものが存在する。
次の節では$\Omega_2$上のシフト写像が実際に$\Lambda$上の$f$と同じであることを示す。
今日の数学はここまで。続きはまた明日。
注釈
はてなキーワードの自動リンクにより数式が崩れるため今回は使用しませんでしたが、原著では$\Omega_2$, $\omega$はそれぞれΣ, σを使用していました。
*1:topologically transitive
【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.5 (23日目)
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この記事はRobert L. Devaney著
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§1.5 の演習問題
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」には演習問題の答えが付属していません。そのため、ここに載せた答案は間違っている可能性があります。間違い等に気づきましたらお知らせくださると助かります。
6.
この演習問題では$\lambda > 0$についての関数族$F(x)=x^3-\lambda x$を扱う。
1. $0<\lambda<1$のときの周期$n$の周期点を全て見つけ出し、分類せよ。 2. $|x|$が十分に大きいならば$|F^n(x)|\to\infty$となることを証明せよ。 3. $\lambda$が十分に大きいならば無限大に大きくなる傾向*1にない点の集合はCantor 集合になることを証明せよ。解答
- $x^3-\lambda x=x$を解けば、固定点は$x=0, \pm\sqrt{1+\lambda}$。周期$2$以上の周期点も$x=0, \pm\sqrt{1+\lambda}$しかない(論理的な導出は思いつきませんでした。)$F'(0)=-\lambda,\ F'(\pm\sqrt{1+\lambda}) = 3+2\lambda$より$0$は吸引的、$\pm\sqrt{1+\lambda}$は反発的である。
- $\displaystyle \lim_{x\to\infty}F(x)=\lim_{x\to\infty}x^2(x-\lambda)=\infty$, $\displaystyle \lim_{x\to-\infty}F(x)=\lim_{x\to-\infty}x^2(x-\lambda)=-\infty$より$n=1$のときは成立。$n=k - 1$のときに成立すると仮定すると、
$$F^k(x)=(F^{k - 1}(x))^2(F^{k - 1}(x)-\lambda )$$
より、前述と同様の議論により$n=k$でも成り立つ。よって、帰納法により任意の自然数$n$について成り立つ。 3. $\lambda\to\infty$のとき、$F(x)$が無限大に発散しない点は$F(x)=0$を満たす点であり、$x=0, \pm\sqrt{\lambda}$ $F^2(x)$が無限大に発散しない点は$F(x)=0, \pm\sqrt\lambda$を満たす$x$である。これを続けていけば$F^n(x)$が無限大に発散しない点は$F^{n-1}(x)=0, \pm\sqrt\lambda$を満たす$x$である。この$x$の集合がCantor 集合であることを示せばいいのですが、思いつきませんでした。$F^n(x)=0, \pm\sqrt\lambda$を満たす点と$x=0, \pm\sqrt\lambda$との距離がそれぞれ$F^{n-1}(x)=0\pm\sqrt{\lambda}$を満たす点との距離よりも近いことを示せれば良さそうです...
7.
例5.5で記述されたCantor の三進集合は閉集合、空ではない、完全かつ完全不連結であることを証明せよ。
解答
Cantor の三進集合を$\Gamma$で表すことにする。$\Gamma$は$I$から単位開区間$I$から開区間の和集合の補集合である。開区間の和集合は開集合であるので、その補集合である$\Gamma$は閉集合である。また、任意の正実数$x$について$0\mathrlap{\,/}{\in}(0, x)$より$0\in\Gamma$であるから$\Gamma$は空ではない。任意の$x\in\Gamma$をとる。簡単のために半径$3^{n}$の$x$の近傍$O$について考える。このとき、$x+3^{n-1}$もしくは$x-3^{n-1}$のどちらか一方は$O$に含まれる(図1参照)。よって$x$は集積点であり$\Gamma$は完全である。$x, y\in\Gamma, x\mathrlap{\,/}{=} y$であり$[x, y]\subset\Gamma$とする。このとき、$x$と$y$の位置関係は図2に示すような3つの種類がある。(a)の場合、次の段階で区間の中央が消去されるので矛盾。(b)の場合、元から区間が存在しないので矛盾。最後に(c)の場合も区間の半分が$\Gamma$に存在していないので矛盾。よって$\Gamma$は完全不連結。
8.
n段階目のCantorの三進集合の残っている区間の合計の長さが
$$1-\frac{1}{3}\left(\sum^{n-1}_{i=0}\left(\frac{2}{3}\right)^i\right)$$ であることを示せ。更に$n\to\infty$のとき、上記の長さが$0$になることを結論付けよ。
解答
$n$段階目で削除される区間の数は$2^n$個である。各区間の長さは$3^{-n-1}$である。よって、$n$段階目に削除される区間の全長は$\frac{1}{3}(\frac{2}{3})^n$である。$n$段階目までに削除される全区間の長さは$1$から$n$までの前述の長さの合計なので、それを$1$から引けば、示すべき式と一致する。
$n\to\infty$のとき、総和の項は初項$1/3$, 公比$2/3$の等比数列であるからその和は$(1/3)/(1-2/3)=1$。よって、長さは$0$。
9.
単位区間の残っている部分区間の各中央$1/5$を削除することにより得られるCantor 5進集合を構成せよ。この場合、残っている区間の長さはいくらか?
解答
$n$段階目で削除される区間の数は$2^n$個で削除される区間の長さは$2^n/5^{n+1}$であるから、削除される区間の総長は初項$1/5$、公比$4/5$の等比数列の和となる。その和は$1$であり、演習8と同様に残る長さは$0.$
10.
$\Gamma$をCantorの三進集合とする。線形写像$L(x)=3x$は$\Gamma\cap[0,1/3]$を$\Gamma$上に1対1で写す(全単射)。
解答
$n$段階目で削除される端点が$\Gamma$を構成するため、その点について議論する。$n$段階目の$\Gamma\cap[0,1/3]$の端点を列挙すると$0, 1/3^n, 2/3^n,\dots,3^{n-1}/3^n$である。これを$L$で写すと$0, 1/3^{n-1},2/3^{n-1},\dots,3^{n-1}/3^{n-1}=1$これは$n-1$段階目の$\Gamma$の端点を網羅している。$L$は線形であるから被りはなく、$n$が十分に大きければ$L$は$\Gamma\cap[0,1/3]$の端点を$\Gamma$の端点に余すことなく写す。
11.
演習問題10の一般化して、$n$段階目で残っている区間の1つに含まれている$\Gamma$の部分は$\Gamma$と同型であることを示せ。
解答
共通部分をとる区間の下端を$m/3^n$とする。ここで$m$は$3^n$以下の非負整数である*2。このとき$m/3^n - m/3^n = 0$であり下端の点は$\Gamma$に含まれているので、$m/3^n$を減じるような写像によって、区間の下端は$0$となる。あとは演習問題10と同様に$3^n$倍する線形写像によって各点は$\Gamma$によって1対1に写される。つまり$L(x)=3^n(x-\frac{m}{3^n})$は$\Gamma\cap[m/3^n, (m+1)/3^n]$を$\Gamma$に写す同型写像。
今日の数学はここまで。続きはまた明日。