ToTTi95Uのメモ帳

数学関係のメモ書き

【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.6 (26日目)

前書き

この記事はRobert L. Devaney著
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」

An Introduction To Chaotic Dynamical Systems, Second Edition (Addison-Wesley Studies in Nonlinearity)

An Introduction To Chaotic Dynamical Systems, Second Edition (Addison-Wesley Studies in Nonlinearity)

を1日1時間ほど読んですぐ、内容を記事に起こしたものである。これ以上詳しいことは1日目の前書きを見るべし。

§1.6の演習問題

 「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」には演習問題の答えが付属していません。そのため、ここに載せた答案は間違っている可能性があります。間違い等に気づきましたらお知らせくださると助かります。

4.

$\Omega'$の全ての列は$\Omega_2$の列で、$s_j=0$ならば$s_{j+1}=1$を満たすとする。別の言い方をすれば、$\Omega'$の全ての列は$"0"$が$2$つ以上連続して出現しない。

1. $\Omega'$は$\omega$に対して不変であり、$\Omega$は$\Omega_2$の閉部分集合であることを示せ。
2. $\omega$の周期点は$\Omega'$で稠密であることを示せ。
3. $\Omega'$で稠密である軌道が存在することを示せ。
4. $\Omega'$において$\omega,\omega^2,\omega^3$の固定点はいくつあるか?
5. $\omega^n$の固定点の数を表す漸化式を見つけよ。ただし、$\omega^{n-1}, \omega^{n-2}$の固定点の数を用いよ。

解答

1.

$\bold s\in\Omega'$に対して$\bold t=(t_0s_0s_1s_2\dots)\in\Omega'$は$\omega(\bold t)=\bold s$であるから、$\Omega'$は$\omega$に対して不変。
 $\Omega'$の点列$\bold{s_0, s_1,\dots}$は$\bold{s'}=(s_0's_1'\cdots)$に収束するとする。このとき各$n$に対して$s_n'=s_n$を満たすような$\bold s_m$が存在する。$\bold s'$が$\Omega'$に属していないとすると、ある$j$が存在して$s_j=0$かつ$s_{j+1}=0$を満たす。しかし、そのような項が存在する$\bold{s}_n$は存在しない。よって矛盾。よって$\Omega'$の任意の点列の極限は$\Omega'$に属し、$\Omega'$は閉集合

2.

 $\theta_n$を$\bold s$の$n$個目の$0$の項までを繰り返す列とする。ただし繰り返すときに$n$個目の$0$は含めない。e.g.) $\bold s=(0110111010101111\cdots)$に対して$\theta_3 = (0110111\ 0110111\ \cdots)$である。このとき$\theta_n\to\bold s.$

3.

 $s^\ast=(\underbrace{01 11}_{1組}|\underbrace{011\ 101\ 111}_{2組}|\underbrace{0101\ 0111\ 1011\cdots}_{3組}|\cdots)$とする。つまり$s^\ast$を$0$が2つ以上連続しない数列の後ろに"1"を付けたもののみで構成された列とする。このとき$s^\ast$の軌道は任意の$\bold s\in\Omega'$を含んでいる。

4.

$\omega$の不動点: $(1\ 1\ 1\cdots)$で$1$つ
$\omega^2$の不動点: $(01\ 01\ 01\cdots),\ (10\ 10\ 10\cdots)$で$2$つ。
$\omega^3$の不動点: $(011\ 011\ 011\cdots),\ (101\ 101\ 101\cdots),\ (110\ 110\ 110\cdots),\ (111\ 111\ 111\cdots)$の$4$つ。

5.

 $\omega^n$の固定点の数$p_n$は$\omega^{n-1},\omega^{n-2}$のものを$p_{n-1},p_{n-2}$と表せば$p_n=p_{n-1}+p_{n-2}$となる。
 理由として、$\omega^{n-1}$の固定点の繰り返している1フレーズに$"1"$を、$\omega^{n-2}$の固定点の繰り返している1フレーズには以下の規則で$"01"$または$"10"$を追加する。 1. フレーズが$0s_1s_2\cdots s_{n-2}$と$0$から始まっている場合には$"01"$を追加する。 2. それ以外の場合は$"10"$を追加する。

このように改変されたフレーズを持つ点はどれも被ることがないため、その個数は$p_{n-1}+p_{n-2}$となる。あとはこれが$\omega_n$の固定点を全て網羅していることを示せばよいのですが、証明を思いつきませんでした。思いつき次第追記します。

 

5.

$\Omega_N$は自然数$1,2,\dots,N$の全ての数列で構成されているとする。$\Omega_N$上には自然なシフト写像が存在する。

1. $\Omega_N$において$\omega$はいくつの周期点を持つか?
2. $\omega$は$\Omega_N$に稠密な軌道を持つことを示せ。

証明

1.

 周期$n$の周期点は長さ$n$の$N$種の文字で構成された列を繰り返すことによって得られるため、その数は$N^n$。

2. 

$\bold s^\ast=(0\ 1\cdots N|00\ 01\ 02\cdots N(N-1)\ NN|\cdots)$とすれば、$\bold s^\ast$の$\omega$による軌道は$\Omega_N$において稠密。

 

6.

 $\bold s\in\Omega_2$とする。$\bold s$の安定集合$W^s(\bold s)$を$i\to\infty$のとき$d(\omega^i(\bold s),\omega^i(\bold t))\to0$となるような$\bold t$の集合として定義する。そこで、$W^s(\bold s)$の全ての列を識別せよ。

解答

 $\ast$を$0$か$1$のどちらも取りうるものとする。$W^s(\bold s)$の元は

$$(s_0s_1s_2\cdots),(\ast s_1s_2\cdots), (\ast \ast s_2s_3\cdots),\dots$$




今日の数学はここまで。続きはまた明日。