【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.6 (26日目)
前書き
この記事はRobert L. Devaney著
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」
- 作者: Robert Devaney
- 出版社/メーカー: Westview Press
- 発売日: 1989/01/21
- メディア: ハードカバー
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§1.6の演習問題
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」には演習問題の答えが付属していません。そのため、ここに載せた答案は間違っている可能性があります。間違い等に気づきましたらお知らせくださると助かります。
4.
$\Omega'$の全ての列は$\Omega_2$の列で、$s_j=0$ならば$s_{j+1}=1$を満たすとする。別の言い方をすれば、$\Omega'$の全ての列は$"0"$が$2$つ以上連続して出現しない。
1. $\Omega'$は$\omega$に対して不変であり、$\Omega$は$\Omega_2$の閉部分集合であることを示せ。
2. $\omega$の周期点は$\Omega'$で稠密であることを示せ。
3. $\Omega'$で稠密である軌道が存在することを示せ。
4. $\Omega'$において$\omega,\omega^2,\omega^3$の固定点はいくつあるか?
5. $\omega^n$の固定点の数を表す漸化式を見つけよ。ただし、$\omega^{n-1}, \omega^{n-2}$の固定点の数を用いよ。解答
1.
$\bold s\in\Omega'$に対して$\bold t=(t_0s_0s_1s_2\dots)\in\Omega'$は$\omega(\bold t)=\bold s$であるから、$\Omega'$は$\omega$に対して不変。
$\Omega'$の点列$\bold{s_0, s_1,\dots}$は$\bold{s'}=(s_0's_1'\cdots)$に収束するとする。このとき各$n$に対して$s_n'=s_n$を満たすような$\bold s_m$が存在する。$\bold s'$が$\Omega'$に属していないとすると、ある$j$が存在して$s_j=0$かつ$s_{j+1}=0$を満たす。しかし、そのような項が存在する$\bold{s}_n$は存在しない。よって矛盾。よって$\Omega'$の任意の点列の極限は$\Omega'$に属し、$\Omega'$は閉集合。2.
$\theta_n$を$\bold s$の$n$個目の$0$の項までを繰り返す列とする。ただし繰り返すときに$n$個目の$0$は含めない。e.g.) $\bold s=(0110111010101111\cdots)$に対して$\theta_3 = (0110111\ 0110111\ \cdots)$である。このとき$\theta_n\to\bold s.$
3.
$s^\ast=(\underbrace{01 11}_{1組}|\underbrace{011\ 101\ 111}_{2組}|\underbrace{0101\ 0111\ 1011\cdots}_{3組}|\cdots)$とする。つまり$s^\ast$を$0$が2つ以上連続しない数列の後ろに"1"を付けたもののみで構成された列とする。このとき$s^\ast$の軌道は任意の$\bold s\in\Omega'$を含んでいる。
4.
$\omega$の不動点: $(1\ 1\ 1\cdots)$で$1$つ
$\omega^2$の不動点: $(01\ 01\ 01\cdots),\ (10\ 10\ 10\cdots)$で$2$つ。
$\omega^3$の不動点: $(011\ 011\ 011\cdots),\ (101\ 101\ 101\cdots),\ (110\ 110\ 110\cdots),\ (111\ 111\ 111\cdots)$の$4$つ。5.
$\omega^n$の固定点の数$p_n$は$\omega^{n-1},\omega^{n-2}$のものを$p_{n-1},p_{n-2}$と表せば$p_n=p_{n-1}+p_{n-2}$となる。
理由として、$\omega^{n-1}$の固定点の繰り返している1フレーズに$"1"$を、$\omega^{n-2}$の固定点の繰り返している1フレーズには以下の規則で$"01"$または$"10"$を追加する。 1. フレーズが$0s_1s_2\cdots s_{n-2}$と$0$から始まっている場合には$"01"$を追加する。 2. それ以外の場合は$"10"$を追加する。このように改変されたフレーズを持つ点はどれも被ることがないため、その個数は$p_{n-1}+p_{n-2}$となる。あとはこれが$\omega_n$の固定点を全て網羅していることを示せばよいのですが、証明を思いつきませんでした。思いつき次第追記します。
5.
$\Omega_N$は自然数$1,2,\dots,N$の全ての数列で構成されているとする。$\Omega_N$上には自然なシフト写像が存在する。
1. $\Omega_N$において$\omega$はいくつの周期点を持つか?
2. $\omega$は$\Omega_N$に稠密な軌道を持つことを示せ。証明
1.
周期$n$の周期点は長さ$n$の$N$種の文字で構成された列を繰り返すことによって得られるため、その数は$N^n$。
2.
$\bold s^\ast=(0\ 1\cdots N|00\ 01\ 02\cdots N(N-1)\ NN|\cdots)$とすれば、$\bold s^\ast$の$\omega$による軌道は$\Omega_N$において稠密。
6.
$\bold s\in\Omega_2$とする。$\bold s$の安定集合$W^s(\bold s)$を$i\to\infty$のとき$d(\omega^i(\bold s),\omega^i(\bold t))\to0$となるような$\bold t$の集合として定義する。そこで、$W^s(\bold s)$の全ての列を識別せよ。
解答
$\ast$を$0$か$1$のどちらも取りうるものとする。$W^s(\bold s)$の元は
$$(s_0s_1s_2\cdots),(\ast s_1s_2\cdots), (\ast \ast s_2s_3\cdots),\dots$$
今日の数学はここまで。続きはまた明日。