【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.1 (1日目)
前書き
ゲームは一日一時間。
そんなことを思い出したので、「数学書は1日1時間」をやってみることにした。すなわち、毎日1時間、ある数学書を読んでその後、ノートやブログにその内容の要約を記すのである。唐突な思いつきで始めたものなのでいつまで続くか分からない(少なくともこの本を読み切ることはないだろう)ので、これが突然終わってもどうか責めないでいただきたい。
とういうことで今日から読み始めるのはRobert L. Devaney著の
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」
である。
- 作者: Robert Devaney
- 出版社/メーカー: Westview Press
- 発売日: 1989/01/21
- メディア: ハードカバー
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§1.1 EXAMPLES OF DYNAMICAL SYSTEMS
力学系とは
ここから今日読んだ内容について記す。 力学系とは何であろうか。この問いに対する答えは至極単純だ。離散力学系の例を挙げよう。関数電卓を手に取って、何でもいいので適当な値を入力する。その後、適当な関数のボタン、例えば"exp"のボタンを何回も押したとする。(カシオの電卓の場合は$exp(\text{ANS})$と入力し$=$を何回も押せばよい。)すると関数電卓は次のような数列を計算する。
$$x, e^ x, e^ {e^ x}, e^ {e^ {e^ x}}, \dots$$
これが離散力学系と呼ばれるものの1つである。この場合において、電卓は指数関数を繰り返し計算している。いくつかの初期値で計算すると、どの初期値$x$に対しても電卓はすぐさま「計算範囲超えです」と表示することに気づく。このことは$\exp(x)$の反復が$\infty$になる傾向があることを示している。この事実は次の疑問を生み出す。「関数$f$と初期値$x_0$が与えられたとき、最終的にそれらは反復による次のような数列を生み出すのではないか?」
$$x_0, f(x_0), f(f(x_0)), f(f(f(x_0))), \dots$$
別の例として$\sin x$を考える。何回かボタンを押したところで次のようなことに気づくだろう。すなわち、どんな初期値$x_0$に対しても反復した値は$0$に収束する。同様に$\cos x$は弧度法においてかなり急速に$0.73908$に収束するような数列を任意の初期値に対して生み出すことが分かる。以上のことから、反復により得られる数列は、ある1つの極限値に収束すると考えてしまうが事実はそうではない。
もっとも単純な2次関数がその考えの反例となる。プログラムか電卓で関数$f(x) = 4x(1-x)$を反復することにより得られる数列を見て見ると、0から1の異なる初期値に対して数列は劇的に違う挙動を示すことが分かる。挙動は周期的に値を繰り返すかそうでないかだ。ほとんどの場合において値の挙動にはこれといったパターンがないんじゃないかと思わせられる。(が実際には$f(x)$という決定的なルールがある)パラメーターを$4$から$3.839$に変える、すなわち、$f(x) = 3.893x(1-x)$について考えると状況は驚くほど様変わりする。ランダムに$0$から$1$の初期値を選んで数列を作成すると、数列はやがて3つの値$0.149888\dots,\ 0.489172\dots,\ 0.959299\dots$を周期的に繰り返す。これはパラメーターが$4$のときの雑然とした無秩序とは正反対の状態である。バラメーターがどちらの場合においても、たった1つの値に収束していないことに留意してもらいたい。
今日の数学はここまで。明日はこの続きから。