ToTTi95Uのメモ帳

数学関係のメモ書き

【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.5 (21日目)

前書き

この記事はRobert L. Devaney著
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」

An Introduction To Chaotic Dynamical Systems, Second Edition (Addison-Wesley Studies in Nonlinearity)

An Introduction To Chaotic Dynamical Systems, Second Edition (Addison-Wesley Studies in Nonlinearity)

を1日1時間ほど読んですぐ、内容を記事に起こしたものである。これ以上詳しいことは1日目の前書きを見るべし。

$\Lambda$がCantor集合であることの証明 (続き)

昨日の記事において、Cantor 集合の定義5.4において、「真部分集合」と訳した箇所を「完全な部分集合」と改めました。それに付随して集合が「完全」であることの説明も書き加えましたので、ご確認ください。

$\Lambda$は閉区間の共通部分で出来ているから、$\Lambda$は閉集合である。今から、$\Lambda$が完全であることを証明する。最初に任意の$A_k$の端点は$\Lambda$に含まれることに注意せよ。確かに、そのような点は最終的に固定点$0$に写されるから反復において$I$にとどまり続ける。今、$p\in\Lambda$は孤立しているなら、十分に近い全ての点は必ず$F$の反復の下で$I$から離れる。そのような点はいくつかの$A_k$に含まれるはずである。このとき$p$に収束する$A_k$の端点の点列が存在するか、削除された$p$の近傍のすべての点はいくつかの$F^n$によって$I$の外に写される。前者の場合、$A_k$の端点は$0$に写されるため、$p$は$\Lambda$内にある。後者の場合、$F^n$は$p$を$0$に写し、$p$の近傍内のほかのすべての点は実軸の負に写すと仮定する。すると、$F^n$は$p$で極大値を持つので$(F^n)'(p)=0$である。連鎖律から、いくらかの$i<n$について$F'(F^i(p))=0$が成り立つ。それゆえ、$F^i(p)=1/2$である。しかしながら、$F^{i+1}(p)\mathrlap{\,/}{\in} I$であるから$F^n(p)\to-\infty$であり、$F^n(p)=0$であることに矛盾する。よって$p$はる累積点であり、証明を得る。

定理 5.6

 $\mu>2+\sqrt{5}$ならば$\Lambda$はCantor 集合である。

注意

 $\mu>4$についても定理は真であるが、証明はより繊細である。

私たちは$\mu>4$における$F_\mu$の大体の軌道の挙動について理解することが出来た。点は$F_\mu$の反復によって$=\infty$に向かう傾向にあるか、軌道全体が$\Lambda$内に存在するかのどちらかである。それゆえ、点が$\Lambda$に属さない限り、$F_\mu$における点の軌道は完全に理解できる。次節では$\Lambda$上のダイナミクスをを解析することによって$F_\mu$の解析を完了する。
 $\mu>2+\sqrt{5}$のとき、$I_0\cup I_1$において$|F'_\mu(x)|>1$であった。これは$\Lambda$上では$|F'_\mu(x)|>1$であることを意味する。これは周期点だけでなく、集合全体で$|F'_\mu(x)|\mathrlap{\,/}{=}1$を要求することを除いて、§3の双曲性条件*1と同様の条件である。これは双曲型集合*2を定義する動機付けになる。

定義

 集合$\Gamma\subset \mathbb{R}$が$f$についての反発的(それぞれ吸引的)集合であるとは、$\Gamma$は閉集合かつ有界かつ$f$の下で不変であり、ある$N>0$が存在して$|(f^n)'(x)|>1$(それぞれ$<1$)を全ての$n\geq N$および全ての$x\in\Gamma$について成り立つことを言う。

 $\mu>2+\sqrt{5}$のときの二次関数についてのCantor 集合$\Lambda$は勿論、$N=1$のときの反発的双曲型集合である。


今日の数学はここまで。続きはまた明日。

*1:原著ではhyperbolicity condition.

*2:原著ではhyperbolic set