【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.5 (21日目)
前書き
この記事はRobert L. Devaney著
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」
- 作者: Robert Devaney
- 出版社/メーカー: Westview Press
- 発売日: 1989/01/21
- メディア: ハードカバー
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$\Lambda$がCantor集合であることの証明 (続き)
昨日の記事において、Cantor 集合の定義5.4において、「真部分集合」と訳した箇所を「完全な部分集合」と改めました。それに付随して集合が「完全」であることの説明も書き加えましたので、ご確認ください。
$\Lambda$は閉区間の共通部分で出来ているから、$\Lambda$は閉集合である。今から、$\Lambda$が完全であることを証明する。最初に任意の$A_k$の端点は$\Lambda$に含まれることに注意せよ。確かに、そのような点は最終的に固定点$0$に写されるから反復において$I$にとどまり続ける。今、$p\in\Lambda$は孤立しているなら、十分に近い全ての点は必ず$F$の反復の下で$I$から離れる。そのような点はいくつかの$A_k$に含まれるはずである。このとき$p$に収束する$A_k$の端点の点列が存在するか、削除された$p$の近傍のすべての点はいくつかの$F^n$によって$I$の外に写される。前者の場合、$A_k$の端点は$0$に写されるため、$p$は$\Lambda$内にある。後者の場合、$F^n$は$p$を$0$に写し、$p$の近傍内のほかのすべての点は実軸の負に写すと仮定する。すると、$F^n$は$p$で極大値を持つので$(F^n)'(p)=0$である。連鎖律から、いくらかの$i<n$について$F'(F^i(p))=0$が成り立つ。それゆえ、$F^i(p)=1/2$である。しかしながら、$F^{i+1}(p)\mathrlap{\,/}{\in} I$であるから$F^n(p)\to-\infty$であり、$F^n(p)=0$であることに矛盾する。よって$p$はる累積点であり、証明を得る。
定理 5.6
$\mu>2+\sqrt{5}$ならば$\Lambda$はCantor 集合である。
注意
$\mu>4$についても定理は真であるが、証明はより繊細である。
私たちは$\mu>4$における$F_\mu$の大体の軌道の挙動について理解することが出来た。点は$F_\mu$の反復によって$=\infty$に向かう傾向にあるか、軌道全体が$\Lambda$内に存在するかのどちらかである。それゆえ、点が$\Lambda$に属さない限り、$F_\mu$における点の軌道は完全に理解できる。次節では$\Lambda$上のダイナミクスをを解析することによって$F_\mu$の解析を完了する。
$\mu>2+\sqrt{5}$のとき、$I_0\cup I_1$において$|F'_\mu(x)|>1$であった。これは$\Lambda$上では$|F'_\mu(x)|>1$であることを意味する。これは周期点だけでなく、集合全体で$|F'_\mu(x)|\mathrlap{\,/}{=}1$を要求することを除いて、§3の双曲性条件*1と同様の条件である。これは双曲型集合*2を定義する動機付けになる。
定義
集合$\Gamma\subset \mathbb{R}$が$f$についての反発的(それぞれ吸引的)集合であるとは、$\Gamma$は閉集合かつ有界かつ$f$の下で不変であり、ある$N>0$が存在して$|(f^n)'(x)|>1$(それぞれ$<1$)を全ての$n\geq N$および全ての$x\in\Gamma$について成り立つことを言う。
$\mu>2+\sqrt{5}$のときの二次関数についてのCantor 集合$\Lambda$は勿論、$N=1$のときの反発的双曲型集合である。
今日の数学はここまで。続きはまた明日。