ToTTi95Uのメモ帳

数学関係のメモ書き

【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.3 (15日目)

追記(2019/11/17). 問題7と問題8の解答を追加しました。

再開が一日遅れて申し訳ありませんでした。

前書き

この記事はRobert L. Devaney著
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」

An Introduction To Chaotic Dynamical Systems, Second Edition (Addison-Wesley Studies in Nonlinearity)

An Introduction To Chaotic Dynamical Systems, Second Edition (Addison-Wesley Studies in Nonlinearity)

を1日1時間ほど読んですぐ、内容を記事に起こしたものである。これ以上詳しいことは1日目の前書きを見るべし。

 また、今までhomeomorphismを準同型写像と訳していましたが、「同相写像」の方が合っているため、今日からそのように記述します。

§1.3の演習問題

 「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」には演習問題の答えが付属していません。そのため、ここに載せた答案は間違っている可能性があります。間違い等に気づきましたらお知らせくださると助かります。

7.

$\mathbb{R}$の同相写像において、素周期(prime period)が$3$以上の周期点は存在しないことを示し、周期2の周期点を持つ同相写像を一つ取り上げよ。

解答

$f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}$を同相写像とし、$a, b, c$を$f$の素周期が3の点の軌道とする。すなわち、$f(a) = b, f(b) = c, f(c) = a$である。ここで、$f$は単調なので仮に単調増加であると仮定する。さらに$a < b$と仮定する。このとき、$f$が単調増加であるから、

$$f(a) = b < c = f(b)$$ を得る。このことから更に

$$f(b) = c < a = f(c)$$ を得る。上の二式から$b<a$が導き出せるがこれは矛盾。$b < a$や$a < c$、$f$が単調減少の場合も同様に矛盾が生じる。ゆえに$f$は素周期が$3$以上の周期点を持たない。

 

8.

同相写像は最終的周期点を持たないことを示せ。

解答

同相写像$f:X\to X$が最終的周期点$x$を持つとする。すなわち、

$$^\exist i\in\mathbb{Z}\text{ s.t. } f^{i-1}(x) \mathrlap{\,/}{=} f^i(x) \land f^i(x) = f^{i+1}(x)$$ ゆえに、上の式の等式に各写像に$f^{-i}$を合成すれば

$$x = f(x)$$ を得る。さらに先ほどの式の不等式に各写像に$f^{-i+1}$を合成すれば

$$x \mathrlap{\,/}{=} f(x)$$ を得る。ゆえに矛盾。

 

9.

$S:S^1\to S^1$を$S(\theta) = \theta + \omega + \epsilon\sin\theta$で定義する。ここで$\omega, \epsilon$は定数である。このとき、$|\epsilon|<1$であるならば$S$は同相写像であることを証明せよ。

解答

$S$が連続であることは明らかである。$S'(\theta) = 1 + \epsilon\sin\theta$である。ここで$|\epsilon|<1$であるから常に$\epsilon\sin\theta > -1$。よって$S'(\theta) > 0$すなわち、$S$は単調増加関数である。よって$S$は単射。また、$\omega=0$のとき、$S(0)=0, S(2\pi)=2\pi$であるから、中間値の定理より$S$は全射である。一般の$\omega$に対しても、$\omega=0$のときの$S$の切片が変化するだけであるから同じく全射である。最後に、$S^{-1}$も明らかに連続であるから、$S$は同相写像である。

 

10

$f(\theta)=2\theta$を例題3.4で議論した$S^1$上の写像とする。$f$の周期点の集合は$S^1$で稠密であることを証明せよ。

解答

例題3.4の議論から周期$n$の周期点$\theta$は$\theta=2k\pi/(2^n-1)$であった。ただし、$k$は$2^n$以下の自然数である。ここで$2^n$個の点$\theta=2k\pi/(2^n-1)$は$S^1$を$2^n$等分している。よって$n\to\infty$のとき、点$\theta=2k\pi/(2^n-1)$は$S^1$を埋め尽くす。

 

11

演習問題10.における写像の最終的周期点もまた$S^1$で稠密であることを示せ。

解答

例題3.4の議論と同様にして、周期$n$の最終的周期点は$\theta=2k\pi/2^i(2^n-1)$であることが分かる。ただし、$k$は$2^{i+n}$以下の自然数である。演習問題10と同様にこの最終的周期点は$S^1$を$2^{i+n}$等分している。よって、$n\to \infty$のとき、点$\theta=2k\pi/2^i(2^n-1)$は$S^1$を埋め尽くす。

2問答えが分からない問題がありかなりハードな演習問題でした。これからも頑張りたいと思います。

今日の数学はここまで。続きはまた明日。

【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.3 (14日目)

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この記事はRobert L. Devaney著
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§1.3の演習問題

 「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」には演習問題の答えが付属していません。そのため、ここに載せた答案は間違っている可能性があります。間違い等に気づきましたらお知らせくださると助かります。

7.

$\mathbb{R}$の準同型写像において、素周期(prime period)が$3$以上の周期点は存在しないことを示し、周期$2$の周期点を持つ準同型写像を一つ取り上げよ。

解答

 分かりませんでした。明日も考えます。

今日の数学はここまで。続きはまた明日。

【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.3 (13日目)

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「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」

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§1.3の演習問題

 「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」には演習問題の答えが付属していません。そのため、ここに載せた答案は間違っている可能性があります。間違い等に気づきましたらお知らせくださると助かります。

4.

 演習問題3の写像における固定点についての安定な集合*1を特定せよ。

解答
a. ($f(x)=-x/2$)

 固定点は$0$であり、$f^n(x)=x/(-2^n)$であるから、安定な集合は$\mathbb{R}$である。

b. ($f(x)=-3x$)

 固定点は$0$であり、$f^n(x)=(-3)^nx$であるから、安定な集合は${0}$である。

c.

昨日の相図から、安定な集合は$[0, 1]$だと分かる。

f:id:ToTTi95U:20190727004010p:plain
$f(x)=x-x^2$の相図

d.

 昨日の相図から安定な集合は$[0,\pi]$だと分かる。

f:id:ToTTi95U:20190727004013p:plain
$f(x)=\frac{\pi}{2}\sin x$の相図

e.

昨日の相図から安定な集合は$0$のみである。

f:id:ToTTi95U:20190727004017p:plain
$f(x)=-x^3$の相図

f.

昨日の相図から安定な集合は$[-1, 1]$である。

f:id:ToTTi95U:20190727004021p:plain
$f(x)=\frac{1}{2}(x^3+x)$の相図
 

5.

 次の関数それぞれについて、critical points を全てリストアップし、それぞれがdegenerateかnon-degenerateかを決定せよ。

$$\begin{aligned} &a.\ f(x) = x^3 - x \\ &b.\ S(x)=\sin x \\ &c.\ f(x)=x^4-2x^2\\ &d.\ g(x)=x^3+x^4\end{aligned}$$

解答
a.

$f'(x)=2x-1=0$の解は$x=1/2$であるから、critical pointは$1/2$。$f''(1/2)=2\mathrlap{\,/}{=}0$より、これはnon-degenerateである。

b.

$S'(x)=\cos x=0$の解は$x=\pm\pi/2, \pm3\pi/2,\dots$であるから、これらがcritical pointである。$f''(x)=-\sin(x)$より、すべてのcritical pointはnon-degenerateである。

c.

$f'(x)=4x^3-4x=4x(x^2-1)=0$の解は$x=0, \pm1$であるから、これらがcritical pointである。$f''(x)=12x^2-4$より、すべてのcritical pointはnon-degenerateである。

d.

$g(x)=3x^2+4x^3=x^2(3+4x)=0$の解は$x=0,-3/4$であるから、これらがcritical pointである。$f''(x)=6x+12x^2$であるから、$0$はdegenerate、$-4/3$はnon-degenerateである。

 

6.

 円周上の次の写像の相図を記述せよ。ただし、$0<\epsilon<1/n$とする。

$$f(\theta) = \theta + \frac{\pi}{n} + \epsilon\sin(n\theta)$$

方程式$f(\theta)=\theta + \pi/n + \epsilon\sin(n\theta)=\theta$は$\pi = n\epsilon\sin(n\theta)$と変形できる。いま、$0<\epsilon<1/n$であるから、$0<n\epsilon < 1 < \pi$である。よって方程式の解は存在せず、固定点は存在しない。また、同様の理由で常に$f(\theta)>\theta$である。また、$f(\theta)-\theta$が最小になるのは、$\theta=3\pi/2n, 7\pi/2n,\dots, (4n-1)\pi/2n$のときであり、最大となるのは$\theta = \pi/2n, 5\pi/2n, \dots,(4n-3)\pi/2n$のときである。以上より、$f(\theta)$の相図は以下のようになる。

f:id:ToTTi95U:20190727235619p:plain
$n=3$のときの$f(\theta)$の相図

今日の数学はここまで。続きはまた明日。

*1:すなわち、反復回数を無限大の極限にとったときに、固定点にとなる点の集合

【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.3 (12日目)

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を1日1時間ほど読んですぐ、内容を記事に起こしたものである。これ以上詳しいことは1日目の前書きを見るべし。

§1.3の演習問題

 「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」には演習問題の答えが付属していません。そのため、ここに載せた答案は間違っている可能性があります。間違い等に気づきましたらお知らせくださると助かります。

1.

次の関数を電卓を使って、任意の初期値に対して反復しその結果を説明せよ。

  1. $C(x)=\cos(x)$
  2. $S(x)=\sin(x)$
  3. $E(x)=e^x$
  4. $F(x)=e^{x-1}$
  5. $A(x)=\tan^{-1}(x)$
解答
  1. 任意の初期値に対して$0.7390\cdots$に収束。
  2. 任意の初期値に対して$0$に収束。
  3. 任意の初期値に対して$+\infty$に発散。
  4. 初期値$x_0$が$x_0\leq1$ならば$1$に収束し、$x_0>1$ならば$+\infty$に発散。
  5. 任意の初期値に対して$0$に収束。

 

2.

 関数のグラフを用いて演習問題1. のそれぞれの写像の固定点を特定せよ。

解答
  1. $C(x)=\cos x$

f:id:ToTTi95U:20190727002030p:plain
固定点はおおよそ$0.739$
2. $S(x) = \sin x$

f:id:ToTTi95U:20190727002254p:plain
固定点は$0$
3. $E(x) = e^x$

f:id:ToTTi95U:20190727002025p:plain
固定点は無し
4. $F(x) = e^{x-1}$

f:id:ToTTi95U:20190727002027p:plain
固定点は$1$
5. $A(x) = \tan^{-1} x$

f:id:ToTTi95U:20190727002030p:plain
固定点は$0$

 

3.

 次の写像それぞれの周期点の一覧を作成せよ。次に$f(x)$のグラフを用いて示された区間における$f(x)$の相図をスケッチせよ。

$$\begin{aligned}a. &f(x) = -\frac{1}{2}x, &\infty < x < \infty \\b. &f(x) = -3x, &-\infty < x < \infty \\c. &f(x) = x-x^2, &0\leq x\leq 1\\d. &f(x) = \frac{x}{2}\sin(x), &0\leq x \leq \pi \\e. &f(x) = -x^2, &-\infty < x < \infty \\f. &f(x) = \frac{1}{2}(x^3 + x), &-1\leq x\leq 1\end{aligned}$$

解答
a.

$f^n(x) = (-2^{-n})x = x$の$x$についての解が周期点である。この方程式の解が$0$しかないのは明らか。よって、周期点は$0$ただ一つ。

f:id:ToTTi95U:20190727004003p:plain
$f(x)=-\frac{1}{2}x$の相図

b.

a と同じく$f^n(x) = (-3)^nx = x$の$x$についての解が周期点である。よって、周期点は$0$ただ一つ。

f:id:ToTTi95U:20190727004007p:plain
$f(x)=-3x$の相図

c.

$f(x)=x-x^2=x(1-x)=x$の解は$x{(1-x)-1}=x(-x)=0$より$x=0$。したがって、固定点は$0$のみである。また、この関数は$0\leq x\leq 1$で$0\leq f(x) \leq 1$である。よって、$f^2(x)=f(x)(1-f(x))=x$の解は$f(x)=0$すなわち$x=0$のみである。同様にして$f^3, f^4, \dots$の固定点も$0$のみであることが分かる。よって、周期点は$0$ただ一つ。

f:id:ToTTi95U:20190727004010p:plain
$f(x)=x-x^2$の相図

d.

$0\leq x \leq \pi$における$f(x)=\frac{\pi}{2}\sin(x) = x$の解は$0, \pi/2$である。$f^2(x)=\frac{\pi}{2}\sin f(x) = x$の解は$f(x)$が$0$から$\pi/2$までの値しかとらないことから、最初にそのような場合において$0, \pi/2$しか解を持たないことが分かっているので、解の可能性があるのは$0, \pi/2$である。実際、$0, \pi/2$は$f^2(x)=x$の解となっている。同様にして$f^3, f^4,\dots$の固定点が$0, \pi/2$であることも分かる。ゆえに周期点は$0$と$\pi/2$のみである。

f:id:ToTTi95U:20190727004013p:plain
$f(x)=\frac{\pi}{2} \sin x$の相図

e.

$f^n(x) = (-1)^nx^{3^n}$であるから、$f^n(x) = x$の解は

$$x{(-1)^n x^{3^n-1}-1}=0$$ によって与えられる。$n$が偶数のとき$(-1)^n x^{3^n-1}$は常に正となり、解は$x=0$のみである。$n$が奇数のときは$(-1)^n x^{3^n-1}$は常に負であるから、解は$x=0, \pm1$である。従って、周期点は$0, \pm1$の3つである。

f:id:ToTTi95U:20190727004017p:plain
$f(x)=-x3$の相図

f.

$f(x) = \frac{1}{2}(x^3+x)=x$の解は簡単な式変形によって$x=0, \pm1$であることが分かる。ここで$f(x)$は問題の条件では$-1\leq f(x)\leq 1$であることに注目すると、$f^2(x)=\frac{1}{2}(f(x)^3+f(x))=x$の解は$x=0,\pm1$であることが分かる。同様にして$f^3,f^4,\dots$の固定点も$x=0, \pm1$であることが分かるので、周期点は$0, \pm1$の3つ。

f:id:ToTTi95U:20190727004021p:plain
$f(x) = \frac{1}{2}(x^3+x)$の相図

今日の数学はここまで。続きはまた明日。

【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.3 (11日目)

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Jacobi's Theorem

 例3.11と、もう一つ大事な円周上の写像の種類は平行移動の写像である。

例3.12 (円の平行移動)

 $\lambda\in\mathbb{R}$と$T_\lambda(\theta)=\theta+2\pi\lambda$とする。写像$T_\lambda(\theta)$は$\lambda$が有理数無理数かによって挙動が大きく異なる。もしも$p, q\in\mathbb{Z},\ q \mathrlap{\,/}{=}0$として$\lambda=p/q$であるならば、$T^q_\lambda(\theta) = \theta + 2\pi p = \theta$であるから、全ての点は$T^q_\lambda$によって固定される。$\lambda$が無理数のときには状況は大きく異なる。次の結果はJacobiの定理として知られているものである。

 

定理3.13

 軌道$T_\lambda$は$\lambda$が無理数であるとき、$S^1$で稠密である

証明

 $\theta\in S^1$とする。$\theta$の軌道の点は異なる。なぜならば、$T^n_\lambda(\theta) = T^m_\lambda(\theta)$であるならば、$(n-m)\lambda\in\mathbb{Z}$を得ることによって$n=m$となるからである。円周上の点の無限集合は必ず極限を持つ。したがって、与えられた任意の$\epsilon>0$に対して$|T^n_\lambda(\theta)-T^m_\lambda(\theta)| < \epsilon$*1となるような$n$と$m\ $が存在しなければならない。ここで $k=n-m\ $とすると$|T^k_\lambda(\theta)-\theta|<\epsilon$である。

 今、$T_\lambda$は$S^1$で長さを保つ。つまり、写像$T^k_\lambda$は$\theta$から$T^k_\lambda(\theta)$、$T^k_\lambda(\theta)$から$T^{2k}_\lambda(\theta)$への長さが$\epsilon$未満となるような円弧を描く*2。特に点$\theta, T^k_\lambda(\theta), T^{2k}_\lambda(\theta),\dots$は$S^1$を長さが$\epsilon$以下であるような円弧に分割する。$\epsilon$は任意であったから、これで証明終了である。

今日の数学はここまで。続きはまた明日。

*1:$T^n_\lambda(\theta)$または$T^m_\lambda(\theta)$に収束する数列

*2:$|T^k_\lambda(\theta)-T^{2k}_\lambda(\theta)|$は$2\pi k\lambda$であり、これは$|T^n_\lambda(\theta)-T^m_\lambda(\theta)|$と同じである。

【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.3 (10日目)

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力学系の簡単な解析方法

 力学系の目標はすべての軌道の性質および、軌道の集合が周期的、最終的周期的、漸近的などであることを見分ける方法を理解することである。一般に、これは不可能なことである。例えば、$f(x)$が2次関数であるならば、はっきりと周期$n$の周期点を見つけるためには$2^n$次多項式による方程式$f^n(x)=x$を解く必要がある。数値計算によって周期点を見つけることはしばしば誤解を招くため、コンピュータは大いに役立ちはしない。数値の丸め誤差は蓄積し、コンピューターに多くの周期点を見えないようにしてしまう傾向にある。それゆえ、与えられた力学系を理解するためには、定性的もしくは幾何的な手法しか残されていない。これは系のすべての軌道の挙動の幾何的な画像を探すべきだということを意味している。

 実数上の関数のグラフは最初の反復の情報を提供する。しかし、それは軌道の部分列のごくわずかな情報しかない。多くの反復によるものを理解するために、私たちはそれらの*1グラフをスケッチことを試みることが出来る。しかし、それは面倒な作業である。相図という、力学系の軌道を記述するためのより効率的な幾何による手法が存在する。これは全ての軌道を数直線上に写した画像である。例えば、$f(x)=-x$のすべtの$0$でない軌道は周期$2$を持ち、私たちは図 1のような相図を描くことによって示すことが出来る。この図は他の写像の相図も描いている。

f:id:ToTTi95U:20190724233259p:plain
図 1. 各写像に対する相図

 もちろん、$f(x)$のグラフは最初の反復についての情報を保持している。私たちはより多い反復の見通しを向上させるために、グラフ解析*2次のように生み出される相図を使うだろう。明らかな方法で対角線$\Delta = {(x,x)|x\in \mathbb{R} }$と$\mathbb{R}$を識別する。点$(p, p)$から$f$のグラフが対角線と交わる点$(p, f(p))$に垂線($y$軸に平行)を引く。その次に$(p,f(p))$から対角線$\Delta$にぶつかる点$(f(p), f(p))$まで水平線を引く。それゆえ、$\Delta$に戻る水平線に続くグラフへの垂線は対角線上の$f$の下の点$p$のイメージを生み出す。したがって、私たちは$x$軸ではなく対角線上で捉える写像の相図を可視化するだろう。その後、軌道は$\Delta$からグラフへの垂直な線分とその次にグラフから$\Delta$への水平な線分を描くことによって与えられるだろう。図 2.はこの手順を$g(x)=x^3$と$f(x)=2x-x^2$に適用したイラストである。

f:id:ToTTi95U:20190724233253p:plain
図 2. a. $g(x)=x^3$とb. $f(x)=2x-x^2$ のグラフ解析

 円周上の微分同相写像は数直線$\mathbb{R}$上のものとは違う興味深い種類の写像を表す。次の例は典型的である。

例3.11

 $0<\epsilon<1/2$とし、$f(\theta)=\theta + \epsilon\sin(2\theta)$とする。$f$は固定点$0, \pi/2, \pi, 3\pi/2$を持つことの注目せよ。計算すると$f'(0)=f'(\pi)=1+2\epsilon > 1$である一方$f'(\pi/2)=f'(3\pi/2)=1-2\epsilon < 1$である。それゆえ、$0$と$\pi$は反発的な固定点であり、$\pi/2, 3\pi/2$は吸引的である。より一般には、$0<\epsilon<1/N$である限り、$f(\theta)=\theta + \epsilon\sin(N\theta)$は$N$個の吸引的な固定点と$N$個の反発的な固定点を円周上に等間隔で交互に持つ。

 これらの写像の相図は図3.の様に描かれるであろう。

f:id:ToTTi95U:20190724233304p:plain
図 3. a. $f(\theta)=\theta+\epsilon\sin(2\theta)$ と
b. $f(\theta)=\theta+\epsilon\sin(4\theta)$の相図

今日の数学はここまで。続きはまた明日。

*1:おそらく、$f(x), f^2(x), f^3(x),\dots$のグラフのこと。

*2:英語でgraphical analysis, 雲の巣図法のほうが意味的には近いと思われる。