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数学関係のメモ書き

【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.3 (9日目)

前書き

この記事はRobert L. Devaney著
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」

An Introduction To Chaotic Dynamical Systems, Second Edition (Addison-Wesley Studies in Nonlinearity)

An Introduction To Chaotic Dynamical Systems, Second Edition (Addison-Wesley Studies in Nonlinearity)

を1日1時間ほど読んですぐ、内容を記事に起こしたものである。これ以上詳しいことは1日目の前書きを見るべし。

§1.3 ELEMENTARY DEFINITIONS

用語の定義と例

 力学系理論の基本的な目標は反復による最終的、漸近的な挙動を理解することである。関数の反復のような離散的な過程において、私たちは点$x$に関するnが大きいときの最終的な挙動$x, f(x), f^2(x),\dots, f^n(x)$を理解したいと思う。この章ではもっとも単純な種類の実数の1変数関数の力学系が最終的にどのような挙動をとるかという疑問に答えようと試みる。力学系を定める関数は写像(mapping)とも呼ばれる。これは1つの点をもう一つの点に写すという幾何学的な手続きを意味している。

定義3.1

 xのfoward orbitsとは$x,f(x), f^2(x),\dots$の集合であり、$O^+(x)$と表す。もし、$f$が準同型であるなら、xのbackward orbits $O^-(x)$が定義できる。つまり$x, f^{-1}(x), f^{-2}(x),\dots$の集合である。また$x,O^+(x)$のfull orbitsを定義することも出来る。それは$n\in \mathbb{Z}$とするときの$f^n(x)$の集合である。

したがって、私たちの基本的な目標は写像のすべての軌道(orbits)を理解することである。軌道およびfoward orbitsは単純な非線形写像のものでさえかなり複雑になる。しかしながら、特に単純で系全体の研究において中心的な役割を果たす軌道が存在する。

定義3.2

 点$x$が$f$の固定点(fixed point)または不動点であるとは、$f(x)=x$を満たすことである。また、点$x$が$f^n(x)=x$を満たすとき、$x$を周期$n$の周期点であるという。$f^n(x)=x$を満たす最も小さい$n$を$x$のprime periodという。これから周期$n$(primeである必要はない)の周期点の集合を$\text{Per}_n(f)$で表し、固定点の集合を$\text{Fix}(f)$と表すことにする。周期点のすべてを反復したものの集合は周期軌道の形をしている。

 写像はもしかしたら多くの固定点を持っているかもしれない。例えば、恒等写像$id(x)=x$は$\mathbb{R}$のすべての点が固定点である。その一方で、写像$f(x)=-x$の固定点は原点のみである。そのほかのすべての点は周期$2$の周期点である。しかしながら、これらの例は典型的な力学系ではない。私たちが直面するほとんどの力学系は孤立した周期点を持つ。

例3.3

 写像$f(x)=x^3$は固定点$0, 1, -1$を持ち、ほかの周期的点は持たない。写像$P(x)=x^2-1$は固定点$(1\pm\sqrt{5})/2$を持ち、$0$と$-1$は2周期軌道上にある。

 

例3.4

 $S^1$を平面における単位円の円周上の集合とする。$S^1$の点を一般的な弧度法による角度$\theta$によって表すことにする。それゆえ点は$k$を整数として、$\theta+2k\pi$と表される任意の角度によって定まる。いま、$f(\theta)=2\theta$とする。(円周上の写像は$f(\theta+2\pi) = f(\theta)$)であるから矛盾なく定義されている。)よって、$f^n(\theta) = 2^n\theta$であるから、$\theta$が周期$n$の周期点であるのは、$2^n\theta = \theta + 2k\pi$を満たす整数$k$が存在するときだけである。言い換えると周期点であるのは$\theta = 2k\pi/(2^n-1)$だけである。ここで$0\leq k\leq2^n$*1は整数である。ゆえに$f$についての周期$n$の周期点は単位元の$(2^n-1)$乗根である。つまり周期点の集合は$S^1$で稠密である。詳しくは演習問題10を見よ。

 

定義3.5

点$x$が周期$n$の最終的周期点(eventually periodic point)であるとは、$x$は周期点ではないがある$m>0$が存在し、$i\leq m $に対して$f^{n + i}(x) = f^i(x)$が成り立つことをいう。それゆえ$i\leq m $に対して$f^i(x)$は周期的である。

 

例3.6

 $f(x)=x^2$とする。$f(1)=1$は固定点であるが、$f(-1)=1$は最終的固定点である。

 

例3.7

 円周上で$f(\theta)=2\theta$とする。$f(0)=0$は固定点であることに注目すると、$\theta = 2k\pi/2^n$ならば$f^n(\theta) = 2k\pi$であるから、これは最終的固定点であることが分かる。つまり、最終的固定点もまた$S^1$で稠密である。詳しくは演習問題11を見よ。

 私たちは最終的周期点は写像が準同型であるときには発生しないことを注意する。(なぜ発生しないかと言えば、準同型であるならば写像単射であるから、$x$が最終的周期点であるならば、$f^{n+i}(x) = f^i(x)$であるとき$f^n(x)=x$が成り立つはずであるが、$x$は周期点ではないから矛盾。)

定義3.8

 $p$を周期$n$の周期点とする。点$x$が$p$にforward asymptoticであるとは、$\lim_{i\to\infty} f^{in}(x)=p$であることである。$p$の安定した集合(つまり、全ての$p$にforward asymptoticな点の集合)を$W^s(p)$で表す。

 もし$p$が周期的でないのならば、私たちはforward asymptoticを$|f^i(x)-f^i(p)|\to0\ \ \ (i\to\infty)$の条件を課すことによって定義することが出来る。また、$f$が可逆であるならば上の定義で$i\to-\infty$とした、backward asymptoticを考えることが出来る。$p$のbackwards asymptoticの集合は$p$の不安定な集合と呼ばれ、$W^u(p)$で表される。

例3.9

 $f(x)=x^3$とする。このとき、$W^s(0)$は開区間$-1< x<1$である。$W^u(1)$は正の実数軸である一方で$W^u(-1)$は負の実数軸である。

 

定義3.10

 点$x$が$f$のcritical pointであるとは、$f'(x)=0$を満たすことである。critical point $x$が$f''(x) \mathrlap{\,/}{=} 0$を満たすとき、$x$はnon-degenerateであるといい、$f''(x)=0$のときdegenerateであるという。

 例えば$f(x)=x^2$はnon-degenerate critical point $0$で持つ。しかし$n > 2$において$f(x)=x^n$はdegenerate critical point を$0$で持つ。degenerate critical pointsは極大値か極小値か鞍点($f(x)=x^3$のような)であることに注目すべきだ。しかし、non-degenerate critical point は極大か極小のどちらかしかありえない。Critical pointは微分同相写像では発生しない(なぜならば、$f^{-1}$の導関数は$1/f'(x)$であり、今$x$はcritical なので分母が0となるからである。)、しかし非可逆写像についてのcritical point の存在はそれらの種類の写像がより複雑である理由の1つである。

今日の数学はここまで。続きはまた明日。

*1:$0\leq\theta\leq2\pi$であるから。