【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.3 (10日目)
前書き
この記事はRobert L. Devaney著
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」
- 作者: Robert Devaney
- 出版社/メーカー: Westview Press
- 発売日: 1989/01/21
- メディア: ハードカバー
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力学系の簡単な解析方法
力学系の目標はすべての軌道の性質および、軌道の集合が周期的、最終的周期的、漸近的などであることを見分ける方法を理解することである。一般に、これは不可能なことである。例えば、$f(x)$が2次関数であるならば、はっきりと周期$n$の周期点を見つけるためには$2^n$次多項式による方程式$f^n(x)=x$を解く必要がある。数値計算によって周期点を見つけることはしばしば誤解を招くため、コンピュータは大いに役立ちはしない。数値の丸め誤差は蓄積し、コンピューターに多くの周期点を見えないようにしてしまう傾向にある。それゆえ、与えられた力学系を理解するためには、定性的もしくは幾何的な手法しか残されていない。これは系のすべての軌道の挙動の幾何的な画像を探すべきだということを意味している。
実数上の関数のグラフは最初の反復の情報を提供する。しかし、それは軌道の部分列のごくわずかな情報しかない。多くの反復によるものを理解するために、私たちはそれらの*1グラフをスケッチことを試みることが出来る。しかし、それは面倒な作業である。相図という、力学系の軌道を記述するためのより効率的な幾何による手法が存在する。これは全ての軌道を数直線上に写した画像である。例えば、$f(x)=-x$のすべtの$0$でない軌道は周期$2$を持ち、私たちは図 1のような相図を描くことによって示すことが出来る。この図は他の写像の相図も描いている。
もちろん、$f(x)$のグラフは最初の反復についての情報を保持している。私たちはより多い反復の見通しを向上させるために、グラフ解析*2次のように生み出される相図を使うだろう。明らかな方法で対角線$\Delta = {(x,x)|x\in \mathbb{R} }$と$\mathbb{R}$を識別する。点$(p, p)$から$f$のグラフが対角線と交わる点$(p, f(p))$に垂線($y$軸に平行)を引く。その次に$(p,f(p))$から対角線$\Delta$にぶつかる点$(f(p), f(p))$まで水平線を引く。それゆえ、$\Delta$に戻る水平線に続くグラフへの垂線は対角線上の$f$の下の点$p$のイメージを生み出す。したがって、私たちは$x$軸ではなく対角線上で捉える写像の相図を可視化するだろう。その後、軌道は$\Delta$からグラフへの垂直な線分とその次にグラフから$\Delta$への水平な線分を描くことによって与えられるだろう。図 2.はこの手順を$g(x)=x^3$と$f(x)=2x-x^2$に適用したイラストである。
円周上の微分同相写像は数直線$\mathbb{R}$上のものとは違う興味深い種類の写像を表す。次の例は典型的である。
例3.11
$0<\epsilon<1/2$とし、$f(\theta)=\theta + \epsilon\sin(2\theta)$とする。$f$は固定点$0, \pi/2, \pi, 3\pi/2$を持つことの注目せよ。計算すると$f'(0)=f'(\pi)=1+2\epsilon > 1$である一方$f'(\pi/2)=f'(3\pi/2)=1-2\epsilon < 1$である。それゆえ、$0$と$\pi$は反発的な固定点であり、$\pi/2, 3\pi/2$は吸引的である。より一般には、$0<\epsilon<1/N$である限り、$f(\theta)=\theta + \epsilon\sin(N\theta)$は$N$個の吸引的な固定点と$N$個の反発的な固定点を円周上に等間隔で交互に持つ。
これらの写像の相図は図3.の様に描かれるであろう。
今日の数学はここまで。続きはまた明日。