ToTTi95Uのメモ帳

数学関係のメモ書き

【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.5 (22日目)

前書き

この記事はRobert L. Devaney著
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」

An Introduction To Chaotic Dynamical Systems, Second Edition (Addison-Wesley Studies in Nonlinearity)

An Introduction To Chaotic Dynamical Systems, Second Edition (Addison-Wesley Studies in Nonlinearity)

を1日1時間ほど読んですぐ、内容を記事に起こしたものである。これ以上詳しいことは1日目の前書きを見るべし。

§1.5 の演習問題

 「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」には演習問題の答えが付属していません。そのため、ここに載せた答案は間違っている可能性があります。間違い等に気づきましたらお知らせくださると助かります。

1.

$F_2(x)=2x(1-x)$は$0<x<1$ならば$n\to\infty$のとき、$F_2^n(x)\to1/2$となることを証明せよ。

解答

まずは$0<x<1/2$のときについて考える。このとき$x<F_2(x)<1/2$であるから$n\to\infty$のとき$F_2(x)^n\to1/2$となる。$1/2<x<1$のとき、$0<F_2(x)<1/2$である。よって$F_2(x)<F_2^2(x)<1/2$であるから、同様に$n\to\infty$のとき$F_2(x)^n\to1/2$。$x=1/2$のとき、$F_2(x)=1/2$である。以上を総括すれば、$0<x<1$ならば、$n\to\infty$のとき$F_2^n(x)\to1/2$となる。

 

2.

 単位区間上の$F_4^n(x)$のグラフを描け。ここで$F_4(x)=4x(1-x)$である。さらに、$F_4$は少なくとも$2^n$個の周期$n$の周期点を持つことを結論付けよ。

解答

 

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図1.単位区間上の$F_4^3(x)$の概形
 $F_4$は区間$[0, \frac{1}{2}], [\frac{1}{2}, 1]$を$[0, 1]$に単調増加、単調減少しながら写す。よって、$[0, \frac{1}{2}], [\frac{1}{2}, 1]$上には$F^2_4$によってそれぞれ1つの起伏が出来るはずである。起伏の頂点は$1$なので、$[0, \frac{1}{2}]$に$F^2_4(c)=1$を満たすある$c$が存在する。よって$[0, c], [c, 1/2]$は$F^2_4$によって$[0,1]$に単調に写される。$[\frac{1}{2}, 1]$についても同様である。よって、$[0, \frac{1}{2}], [\frac{1}{2}, 1]$から生じる$4$つの区間上には$F^3_4$によって$4$つの起伏が出来る。
 この議論を繰り返せば、$F^n_4$では$2^{n-1}$個の起伏ができ、それぞれの起伏と対角線との交点は$2$つあるので、$F^n_4$の固定点は$2^n$個である。

 

3.

 次の式により定まるtent 写像の単位区間上のグラフを描け。

$$T_2(x)=\begin{cases} 2x &0\leq x\leq 1/2 \\ 2-2x &1/2\leq x\leq 1\end{cases}$$ 更に、$T^n_2$のグラフを用いて$T_2$は周期$n$の周期点をちょうど$2^n$個持つことを結論づけよ。

解答

 

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図2. 単位区間上の$T_2^3$の概形
 上の図2から分かる通り,$T^n_2$は$2^{n-1}$個の起伏をもつので、$T^n_2$と対角線との交点は$2^n$個ある。

 

4.

 $T(x)$のすべての周期点の集合は$[0, 1]$において稠密であることを証明せよ。

解答

 $T^n_2$の固定点は$[0, 1]$を$2^n$等分した各区間にそれぞれ存在することを示す。
 $T_2$は区間$[0, \frac{1}{2}], [\frac{1}{2}, 1]$をそれぞれ線形に$[0,1]$に写す。よって、$T^2_2$によって$[0, \frac{1}{2}], [\frac{1}{2}, 1]$上には起伏がそれぞれ1つできる。起伏は区分線形であり傾きは$1/2, -1/2, 1/2, -1/2$である。起伏の頂点はそれぞれ$1/4, 3/4$であるから、$4$つの周期点はそれぞれ$[0,\frac{1}{4}], [\frac{1}{4},\frac{2}{4}], [\frac{2}{4},\frac{3}{4}], [\frac{3}{4}, 1]$上にそれぞれ1つ存在する。以上の議論を帰納的に続ければ、$F^n_2$の固定点は$[0,1]$を等分した$2^n$個の区間、$[0,2^{-n}], [2^{-n}, 2\ \cdot\ 2^{-n}], \dots,[(2^n-1)2^{-n}, 1]$にそれぞれ$1$つずつ存在する。よって$n\to\infty$のとき、$[0, 1]$はいくらでも小さい区間に分割され、それぞれに固定点が$1$つずつ存在する。

 

5.

 baker 写像

$$B(x)=\begin{cases}2x &0\leq x\leq 1/2\\ 2x-1 &1/2<x\leq 1 \end{cases}$$ のグラフを描け。周期$n$の周期点を$B$はいくつ持つ?

解答

 

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図3. 単位区間上の$B(x)$の概形
 $B^n$は$[0,1]$に$2^n$個の等しい線分を持つ。$0\leq B^n(x)\leq 1$であるから、各線分と対角線の交点は$1$つである。よって周期$n$の周期点は$2^n$個ある。




今日の数学はここまで。続きはまた明日。