【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.3 (10日目)
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この記事はRobert L. Devaney著
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」
- 作者: Robert Devaney
- 出版社/メーカー: Westview Press
- 発売日: 1989/01/21
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力学系の簡単な解析方法
力学系の目標はすべての軌道の性質および、軌道の集合が周期的、最終的周期的、漸近的などであることを見分ける方法を理解することである。一般に、これは不可能なことである。例えば、$f(x)$が2次関数であるならば、はっきりと周期$n$の周期点を見つけるためには$2^n$次多項式による方程式$f^n(x)=x$を解く必要がある。数値計算によって周期点を見つけることはしばしば誤解を招くため、コンピュータは大いに役立ちはしない。数値の丸め誤差は蓄積し、コンピューターに多くの周期点を見えないようにしてしまう傾向にある。それゆえ、与えられた力学系を理解するためには、定性的もしくは幾何的な手法しか残されていない。これは系のすべての軌道の挙動の幾何的な画像を探すべきだということを意味している。
実数上の関数のグラフは最初の反復の情報を提供する。しかし、それは軌道の部分列のごくわずかな情報しかない。多くの反復によるものを理解するために、私たちはそれらの*1グラフをスケッチことを試みることが出来る。しかし、それは面倒な作業である。相図という、力学系の軌道を記述するためのより効率的な幾何による手法が存在する。これは全ての軌道を数直線上に写した画像である。例えば、$f(x)=-x$のすべtの$0$でない軌道は周期$2$を持ち、私たちは図 1のような相図を描くことによって示すことが出来る。この図は他の写像の相図も描いている。
もちろん、$f(x)$のグラフは最初の反復についての情報を保持している。私たちはより多い反復の見通しを向上させるために、グラフ解析*2次のように生み出される相図を使うだろう。明らかな方法で対角線$\Delta = {(x,x)|x\in \mathbb{R} }$と$\mathbb{R}$を識別する。点$(p, p)$から$f$のグラフが対角線と交わる点$(p, f(p))$に垂線($y$軸に平行)を引く。その次に$(p,f(p))$から対角線$\Delta$にぶつかる点$(f(p), f(p))$まで水平線を引く。それゆえ、$\Delta$に戻る水平線に続くグラフへの垂線は対角線上の$f$の下の点$p$のイメージを生み出す。したがって、私たちは$x$軸ではなく対角線上で捉える写像の相図を可視化するだろう。その後、軌道は$\Delta$からグラフへの垂直な線分とその次にグラフから$\Delta$への水平な線分を描くことによって与えられるだろう。図 2.はこの手順を$g(x)=x^3$と$f(x)=2x-x^2$に適用したイラストである。
円周上の微分同相写像は数直線$\mathbb{R}$上のものとは違う興味深い種類の写像を表す。次の例は典型的である。
例3.11
$0<\epsilon<1/2$とし、$f(\theta)=\theta + \epsilon\sin(2\theta)$とする。$f$は固定点$0, \pi/2, \pi, 3\pi/2$を持つことの注目せよ。計算すると$f'(0)=f'(\pi)=1+2\epsilon > 1$である一方$f'(\pi/2)=f'(3\pi/2)=1-2\epsilon < 1$である。それゆえ、$0$と$\pi$は反発的な固定点であり、$\pi/2, 3\pi/2$は吸引的である。より一般には、$0<\epsilon<1/N$である限り、$f(\theta)=\theta + \epsilon\sin(N\theta)$は$N$個の吸引的な固定点と$N$個の反発的な固定点を円周上に等間隔で交互に持つ。
これらの写像の相図は図3.の様に描かれるであろう。
今日の数学はここまで。続きはまた明日。
【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.3 (9日目)
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この記事はRobert L. Devaney著
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§1.3 ELEMENTARY DEFINITIONS
用語の定義と例
力学系理論の基本的な目標は反復による最終的、漸近的な挙動を理解することである。関数の反復のような離散的な過程において、私たちは点$x$に関するnが大きいときの最終的な挙動$x, f(x), f^2(x),\dots, f^n(x)$を理解したいと思う。この章ではもっとも単純な種類の実数の1変数関数の力学系が最終的にどのような挙動をとるかという疑問に答えようと試みる。力学系を定める関数は写像(mapping)とも呼ばれる。これは1つの点をもう一つの点に写すという幾何学的な手続きを意味している。
定義3.1
xのfoward orbitsとは$x,f(x), f^2(x),\dots$の集合であり、$O^+(x)$と表す。もし、$f$が準同型であるなら、xのbackward orbits $O^-(x)$が定義できる。つまり$x, f^{-1}(x), f^{-2}(x),\dots$の集合である。また$x,O^+(x)$のfull orbitsを定義することも出来る。それは$n\in \mathbb{Z}$とするときの$f^n(x)$の集合である。
したがって、私たちの基本的な目標は写像のすべての軌道(orbits)を理解することである。軌道およびfoward orbitsは単純な非線形写像のものでさえかなり複雑になる。しかしながら、特に単純で系全体の研究において中心的な役割を果たす軌道が存在する。
定義3.2
点$x$が$f$の固定点(fixed point)または不動点であるとは、$f(x)=x$を満たすことである。また、点$x$が$f^n(x)=x$を満たすとき、$x$を周期$n$の周期点であるという。$f^n(x)=x$を満たす最も小さい$n$を$x$のprime periodという。これから周期$n$(primeである必要はない)の周期点の集合を$\text{Per}_n(f)$で表し、固定点の集合を$\text{Fix}(f)$と表すことにする。周期点のすべてを反復したものの集合は周期軌道の形をしている。
写像はもしかしたら多くの固定点を持っているかもしれない。例えば、恒等写像$id(x)=x$は$\mathbb{R}$のすべての点が固定点である。その一方で、写像$f(x)=-x$の固定点は原点のみである。そのほかのすべての点は周期$2$の周期点である。しかしながら、これらの例は典型的な力学系ではない。私たちが直面するほとんどの力学系は孤立した周期点を持つ。
例3.3
写像$f(x)=x^3$は固定点$0, 1, -1$を持ち、ほかの周期的点は持たない。写像$P(x)=x^2-1$は固定点$(1\pm\sqrt{5})/2$を持ち、$0$と$-1$は2周期軌道上にある。
例3.4
$S^1$を平面における単位円の円周上の集合とする。$S^1$の点を一般的な弧度法による角度$\theta$によって表すことにする。それゆえ点は$k$を整数として、$\theta+2k\pi$と表される任意の角度によって定まる。いま、$f(\theta)=2\theta$とする。(円周上の写像は$f(\theta+2\pi) = f(\theta)$)であるから矛盾なく定義されている。)よって、$f^n(\theta) = 2^n\theta$であるから、$\theta$が周期$n$の周期点であるのは、$2^n\theta = \theta + 2k\pi$を満たす整数$k$が存在するときだけである。言い換えると周期点であるのは$\theta = 2k\pi/(2^n-1)$だけである。ここで$0\leq k\leq2^n$*1は整数である。ゆえに$f$についての周期$n$の周期点は単位元の$(2^n-1)$乗根である。つまり周期点の集合は$S^1$で稠密である。詳しくは演習問題10を見よ。
定義3.5
点$x$が周期$n$の最終的周期点(eventually periodic point)であるとは、$x$は周期点ではないがある$m>0$が存在し、$i\leq m $に対して$f^{n + i}(x) = f^i(x)$が成り立つことをいう。それゆえ$i\leq m $に対して$f^i(x)$は周期的である。
例3.6
$f(x)=x^2$とする。$f(1)=1$は固定点であるが、$f(-1)=1$は最終的固定点である。
例3.7
円周上で$f(\theta)=2\theta$とする。$f(0)=0$は固定点であることに注目すると、$\theta = 2k\pi/2^n$ならば$f^n(\theta) = 2k\pi$であるから、これは最終的固定点であることが分かる。つまり、最終的固定点もまた$S^1$で稠密である。詳しくは演習問題11を見よ。
私たちは最終的周期点は写像が準同型であるときには発生しないことを注意する。(なぜ発生しないかと言えば、準同型であるならば写像は単射であるから、$x$が最終的周期点であるならば、$f^{n+i}(x) = f^i(x)$であるとき$f^n(x)=x$が成り立つはずであるが、$x$は周期点ではないから矛盾。)
定義3.8
$p$を周期$n$の周期点とする。点$x$が$p$にforward asymptoticであるとは、$\lim_{i\to\infty} f^{in}(x)=p$であることである。$p$の安定した集合(つまり、全ての$p$にforward asymptoticな点の集合)を$W^s(p)$で表す。
もし$p$が周期的でないのならば、私たちはforward asymptoticを$|f^i(x)-f^i(p)|\to0\ \ \ (i\to\infty)$の条件を課すことによって定義することが出来る。また、$f$が可逆であるならば上の定義で$i\to-\infty$とした、backward asymptoticを考えることが出来る。$p$のbackwards asymptoticの集合は$p$の不安定な集合と呼ばれ、$W^u(p)$で表される。
例3.9
$f(x)=x^3$とする。このとき、$W^s(0)$は開区間$-1< x<1$である。$W^u(1)$は正の実数軸である一方で$W^u(-1)$は負の実数軸である。
定義3.10
点$x$が$f$のcritical pointであるとは、$f'(x)=0$を満たすことである。critical point $x$が$f''(x) \mathrlap{\,/}{=} 0$を満たすとき、$x$はnon-degenerateであるといい、$f''(x)=0$のときdegenerateであるという。
例えば$f(x)=x^2$はnon-degenerate critical point $0$で持つ。しかし$n > 2$において$f(x)=x^n$はdegenerate critical point を$0$で持つ。degenerate critical pointsは極大値か極小値か鞍点($f(x)=x^3$のような)であることに注目すべきだ。しかし、non-degenerate critical point は極大か極小のどちらかしかありえない。Critical pointは微分同相写像では発生しない(なぜならば、$f^{-1}$の導関数は$1/f'(x)$であり、今$x$はcritical なので分母が0となるからである。)、しかし非可逆写像についてのcritical point の存在はそれらの種類の写像がより複雑である理由の1つである。
今日の数学はここまで。続きはまた明日。
*1:$0\leq\theta\leq2\pi$であるから。
【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.2 (8日目)
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§1.2の演習問題(続き)
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」には演習問題の答えが付属していません。そのため、ここに載せた答案は間違っている可能性があります。間違い等に気づきましたらお知らせくださると助かります。
3
整数$p$と$n$によってあらわされる$p/2^n$の形の有理数の集合は$\mathbb{R}$で稠密であることを証明せよ。
解答
実数$x$の2進展開したものを$a_0.a_1a_2\cdots$で表すことにする。ただし、$a_0$は$x$の整数部分を2進展開したものを表す。このとき次の極限
$$\frac{a_0}{2^0}, \frac{a_0a_1}{2^1}, \frac{a_0a_1a_2}{2^2},\dots, \frac{a_0a_1\cdots a_n}{2^n},\dots$$ は$x$に収束する。この数列の各項は$p/2^n$の形を満たしているため、この形の有理数の集合は$\mathbb{R}$で稠密である。
7
$B(x)$を改修して次を満たすような$C^\infty$級関数$C(x)$を構築せよ。
$$\begin{aligned}1.\ C(x) &= 0 &\text{if } x \leq 0 \\ 2.\ C(x)&=1 &\text{if } x \geq 1 \\ 3.\ C'(x) &> 0 &\text{if } 0<x<1\end{aligned}$$
解答
条件1より、$C(x)=B(x)\cdot g(x)$と推測できる。条件2より、$x\geq 1$のとき$g(x)=1/B(x)$となる。このことを考慮すると、
$$C(x)=\frac{B(x)}{B(1-x)+B(x)}$$ となる。
8
$C(x)$を改修して$C^\infty$級の隆起関数$D(x)$を区間$[a,b]$上で構築せよ。ただし、$D(x)$は次を満たす。ただし、$\alpha < a, b < \beta$である。
$$1.\ D(x) = 1 \text{\ \ \ for\ \ \ }a<x<b $$
$$ 2.\ D(x)=0 \text{\ \ \ for\ \ \ } x <\alpha\ \text{and\ } x > \beta$$
$$ 3.\ D'(x) \neq 0 \text{\ \ \ if\ \ \ }x \in (\alpha, a) \text{\ or\ } x \in (b,\beta)$$
解答
$$D(x) = \frac{B(x-\alpha)}{B(a-x)+B(x-\alpha)} - \frac{B(x-b)}{B(\beta-x)+B(x-b)}$$
9
隆起関数を使って$f'(a)=f'(b)=1$と$f(a)=c, f(b)=d$を満たす微分同相関数$f:[a,b]\to[c,d]$を構成せよ。
解答
分かりませんでした。答案を思いついたら書きます。
今日の数学はここまで。明日から§1.3です。
【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.2 (7日目)
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§1.2の演習問題
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」には演習問題の答えが付属していません。そのため、ここに載せた答案は間違っている可能性があります。間違い等に気づきましたらお知らせくださると助かります。
1
次の関数が定義域において単射か全射か準同型か、微分同相かを判定せよ。
- $f(x)=x^{5/3}$
- $f(x)=x^{4/3}$
- $f(x)=3x+5$
- $f(x)=e^x$
- $f(x)=1/x$
- $f(x)=1/x^2$
解答
2
次の$\mathbb{R}$の部分集合が開集合か閉集合かそのどちらでもないか断定せよ。
$\mathbb{Z}$
$\mathbb{Q}$
$\{x|x=\frac{1}{n}, n\text{はいくつかの自然数}\}$
$\{x|\sin(\frac{1}{x})=0\}$
$\{x|x\sin(\frac{1}{x})=0\}$
$\{x|\sin(\frac{1}{x})>0\}$
解答
- 明らかに閉集合。
- 任意の有理数$q$と任意の実数$\epsilon>0$に対して区間$(q-\epsilon,q+\epsilon)$の中には必ず無理数が含まれる。よって開集合ではない。また、有理数の数列は$\sqrt{2}$のような無理数に収束することがあるので閉集合でもない。よって、どちらでもない。
- 集合が有限であれば明らかに閉集合である。しかし集合が無限ならば、その中にいくらでも小さい元が存在するので、$0$に収束するような数列が存在する。よってどちらでもない。
- $0$に収束するような数列が存在するが集合の中に$0$は含まれていないので閉集合ではない。また、明らかに開集合でもない。よってどちらでもない。
- $0$が含まれていないのでどちらでもない。
- 同じくどちらでもない。
3
$p/2^n$で表される有理数の集合は$\mathbb{R}$で稠密であることを証明せよ。ただし$p,n\in\mathbb{Z}$である。
解答
誤りが見つかったため明日解きなおします。解きました。
つぎからの演習問題は隆起函数と呼ばれている関数について考える。定義は次によって与えられる。
$$B(x) = \begin{cases}\exp(-1/x^2)&\text{if }x > 0 \\ 0&\text{if }x \leq 0 \end{cases}$$
4
$B(x)$の外形を描け
解答
5
$B'(0)=0$を証明せよ。
解答
$lim_{h\to0^-}{B(h)-B(0)}/{h}=0$は明らかなので$lim_{h\to0^+}{B(h)-B(0)}/{h}=0$を示す。左辺は次のように変形できる。
$$(\text{左辺}) = \lim_{h\to0^+}\frac{B(h)}{h} = \lim_{h\to0^+}\frac{\frac{1}{h}}{\frac{1}{B(h)}}$$ いま、右辺では$h>0$なので$B(h)=\exp(-1/x^2)$である。ここで右辺の分子と分母はともに$h\to0^+$のとき無限大に発散するので、ロピタルの定理を適用できる。
$$(\text{左辺}) = \lim_{h\to0^+}\frac{-\frac{1}{h^2}}{-2\frac{e^{1/x^2}}{h^3}} = \lim_{h\to0^+} \frac{h}{2e^{1/h^2}}$$ ここで右辺の分子は$0$に収束し、分母は無限大に発散するから、全体として$0$に収束する。よって$B'(0)=0$。
6
全ての$n$について$B^{(n)}(0)=0$を帰納的に証明せよ。そして、$B(x)$が$C^{\infty}$級関数であることを結論付けよ。
解答
5で$B^{(1)}=0$は示したので、$B^{(n)}=0$のとき$\lim_{h\to0^+}{B^{(n)}(h)-B^{(n)}(0)}/h=0$を示す。このとき$m\leq n$について$B^{(m)}(0)=0$であるから、
$$\lim_{h\to0^+}\frac{B^{(n)}(h)-B^{(n)}(0)}{h}=\lim_{h\to0^+}\frac{B^{(n)}(h)}{h} = \lim_{h\to0^+} \frac{B^{(n-1)}(h)-B^{(n-1)}(0)}{h^2}=\cdots=\lim_{h\to0^+}\frac{B(h)}{h^n}$$ となる。5と同様の式変形を最後の極限に施せば$B^{(n+1)}(0)=0$を得る。
7
$B(x)$を次を満たすような$C^{\infty}$級関数$C(x)$に修正せよ。
$C(x)=0\ \ \text{if}\ \ x \leq 0$
$C(x)=1\ \ \text{if}\ \ x \geq 1$
$C'(x)>0\ \ \text{if}\ \ 0<x<1$
解答
$C'(0)=0, C'(1)=0$および3つ目の条件より$0<x<1$において、$C'(x)=ax(1-x)$と推測できる。よって$$C(x) = \int C'(x)dx = a(\frac{1}{2}x^2 - \frac{1}{3}x^3)+D$$ である。$C(0)=0$より$D=0$である。また、$C(1)=1$より$a=6.$よって
$$C(x) = \begin{cases}0 &\text{if }x\leq0 \\ x^2(3-2x) &\text{if }0<x<1\\ 1 &\text{if }x \geq 1\end{cases}$$ であり、これが$C^\infty$級なのは明らか。
誤りであることが分かったため解きなおしました。
今日の数学はここまで。続きはまた明日。
【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.2 (6日目)
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位相空間論の概念
少しの一般的な位相空間の概念と共にこの章を終えたいと思う。一般には、これらの概念は初等的な微分積分学の範囲を超えてしまう。しかし、それらの多くは数直線上においてもっとも単純で可能な場面で起こり、これはまさに我々がこれからなそうとしている場面である。
定義2.13
$S\subset\mathbb{R}$とする。$x\in\mathbb{R}$を$x_n\in S$による数列の極限とする。$S$におけるすべての数列の極限が$S$の元であるとき、$S$は閉集合であるという。
明らかに閉区間は閉集合である。有限個の閉集合の和集合も閉集合である。しかし、無限個の閉集合の和集合は次に示す例のように、閉集合にはならないことがある。
例2.14
$I_n=[\frac{1}{n},1]$とする。このとき
$$\bigcup^{\infty}_{n=1} I_n = (0,1]$$ は$S$の極限$0$を含んでいないから、閉集合ではない。
しかしながら、閉集合の共通部分*1は閉集合を生み出す(空集合は定義から閉集合である。)付け加えて、$I_n$が閉集合で、空でなく有界であり自然数$n$に対して$I_{n+1}\subset I$であるとき、$\bigcap^{\infty}_{n=1} I_{n}$は空でない閉集合である。ここで重要なことは勿論、空でないことである。
定義2.15
$S\subset\mathbb{R}$とする。任意の$x\in S$に対して開区間$(x-\epsilon,x+\epsilon)$と$S$の共通部分が$(x-\epsilon,x+\epsilon)$であるような$\epsilon>0$が存在するとき、$S$は開集合であるという。
閉集合の補集合が開集合となることは明らかであり、逆もまたしかり*2。閉集合に似つかわず、無限個の開集合の和集合は$\mathbb{R}$で開集合である。しかし、無限個の開集合の共通部分は開集合ではないことがある。たとえば、$J_n=(-\frac{1}{n},\frac{1}{n})$のとき、$\bigcap^{\infty}_{n=1}J_n={0}$は閉集合であり開集合ではない。 任意の集合$S$について、$S$の閉包を$\overline{S}$で表す。$\overline{S}$は$S$の全ての数列の極限を元として持つ。例えば、$S=(0,1)$ならば、その閉包$\overline{S}$は閉区間$[0,1]$である。勿論、$S$が閉集合であるなら$\overline{S}=S$である。
定義2.16
$S$の部分集合$U$が$S$で稠密であるとは、$\overline{U}=S$を満たすことである。
例えば、任意の開集合$S$は$\overline{S}$で稠密である。より興味の引かれる例は全ての有理数の集合$\mathbb{Q}$であり、$\mathbb{R}$において稠密である*3。同様に無理数の集合も$\mathbb{R}$で稠密である。ここで稠密な部分集合は必ず大きいと考えてはいないだろうか?著者はそのような考えに警告を鳴らす。稠密な開集合でさえ、区間の合計の長さという観点からでは小さくなりうるのだ。ここで単位区間$I=[0,1]$の例を記す。$I$の中で有理数はいくつかの順序によるリストによって可算な集合を形作る。そのような順序の一つが
$$0, 1, \frac{1}{2}, \frac{1}{3}, \frac{2}{3}, \frac{1}{4}, \frac{3}{4}, \frac{1}{5}, \frac{2}{5}, \frac{3}{5}, \frac{4}{5}, \frac{1}{6},\dots.$$ いま、$\epsilon>0$が十分小さいとする。上のリストの$n$番目の有理数に関する長さが$\epsilon^n$の開区間を考える。これらすべての区間の和集合は$I$で開集合であり、明らかに$I$の中の全ての有理数について稠密であるから、全体としてもそうである。しかし、この集合の全体の長さはかなり小さい。確かに、長さは次で与えられるからである。
$$\sum^{\infty}_{n=1}\epsilon^n=\frac{\epsilon}{1-\epsilon}$$ この例は私たちが採用するダイナミクスに対する位相的アプローチと測度論的アプローチの違いを明確に示している。位相空間論の観点からでは、稠密な部分集合は"大きい"と考えられる。それらの集合は測度論の観点、すなわち全長という視点から見たときには大きかったり小さかったりする。
今日の数学はここまで。続きはまた明日。
【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.2 (5日目)
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微分積分の諸定理
もしかしたら、私たちが使う初等的な微分積分学の重要な特徴は連鎖律かもしれない。
命題2.5
$f, g$が関数であるならば、
$$(f\circ g)'(x) = f'(g(x))g'(x).$$ 特に$h(x)=f^n(x)$ならば、
$$h'(x) = f'(f^{n-1}(x))\cdot f'(f^{n-2}(x))\cdot f'(x).$$
定理2.6
$f:[a,b]\to \mathbb{R}$は$C^1$級とする。そのとき、
$$f(b)-f(a) = f'(c)(b-a)$$ を満たすような$c\in[a,b]$が存在する。
3つ目の重要な微分積分学の結果は中間値の定理である。
命題2.7
$f:[a,b]\to\mathbb{R}$は連続であるとする。$f(a)=u, f(b)=v$としたとき、$u$と$v$の間の任意の実数$z$に対して、$f(c)=z\ (a \leq c \leq b)$を満たすような$c$が存在する。
多変数関数の微分積分学において、もっとも抽象的で一見すると役に立たないように見える定理のうちの一つは陰関数定理である。多くの学生が初めての解析学の授業でこの定理に出会ったときには、この定理の力を正しく理解出来ない。今後私たちが対面する分岐理論の幾何的な結論がこの定理の有効性の誤解を取り払うことを願う。
定理2.8 (陰関数定理)
$G:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}^1$は$C^1$級関数とする(言い換えれば、$G$の2つの偏導関数が存在してそれらは連続である。)更に次を仮定する。
$$\begin{aligned} &1.G(x_0, y_0) = 0 \\ &2.\frac{\partial G}{\partial y}(x_0, y_0) \mathrlap{\,/}{=} 0 \end{aligned}$$ このとき、$x_0$に関する開区間$I$と$y_0$に関する開区間$J$と$C^1$級関数$p:I\to J$が存在して、次を満たす。
$$\begin{aligned} &1.p(x_0) = y_0 \\ &2.\text{任意の}x\in I\text{に対して}G(x, p(x)) = 0 \end{aligned}$$
陰関数定理を証明する代わりに、いくつかの適用例を与える。
例2.9
$G(x,y)=x^2 + y^2 - 1$とする。$G$のレベルごとの集合は円であり、$G=0$は平面上で単位円を定義する。
$G(x_0,y_0)=0$と$y_0>0$、言い換えると$(x_0,y_0)$は半円の上または下半分に位置するとする。明らかに
$$\frac{\partial G}{\partial y}(x_0,y_0) = 2y_0 \mathrlap{\,/}{=} 0$$ であるから陰関数定理が適用される。$x_0$に十分近い任意の$x$が$G(x,p(x))$を満たすような関数$p(x)$とは何であろうか。この場合、陰関数表示の$p(x)$を構成することが出来る。明らかに$p(x)=\sqrt{1-x^2}$がそれであり、それは$x=\pm 1$でない限り$C^\infty$級である($y=0$のとき)。$|x| < 1$に対して$G(x,\sqrt{1-x^2})=0$であるから、陰関数定理は保証される。もしも$y_0 < 0$ならば$p(x)=-\sqrt{1-x^2}$とする必要がある。
多くの場合、ここでやったように$p(x)$を求めることは出来ないことを理解することは重要である。それにもかかわらず、陰関数定理は私たちがしばしば必要とする$p(x)$の存在性を保証する。
例2.10
$G(x,y)=x^5y^4-xy^5-yx^2+1$は$G(1,1)=0$と
$$\frac{\partial G}{\partial y}(1,1) = -2$$ を満たす。それゆえ、$x=1$を含むいくつかの区間が定義域であり、$G(x,p(x))=0$を満たすような関数$p(x)$が存在する。しかし、$y=p(x)$として$G(x,y)=0$を解くことは不可能である。
固定点に関する定理
$x$が固定点(または不動点)とは$f(x)=x$を満たすものである。これらの点は力学系理論の支配的な役割を持つ。次のように中間値の定理を適用することは固定点の存在性のための重要な基準与える。
命題2.11
$I=[a,b]$を区間、$f:I\to I$を連続とする。このとき$f$は少なくとも一つの固定点を持つ。
証明:
$g(x)=f(x)-x$とする。明らかに$g(x)$は$I$で連続である。$f(a)>a$かつ$f(b)>b$とする(そうでなければ$a$か$b$のどちらかが固定点である)。したがって$g(a)>0$かつ$g(b)<0$を得るから中間値の定理は$g(c)=0$を満たす$a$と$b$の間にある$c$の存在性を与える。よって$f(c)=c$。$\blacksquare$
この命題はよりBrouwerの不動点定理と呼ばれるより一般的な定理の特別な場合である。この定理は高次元の力学系における固定点の存在性のための同じような十分な条件を与える。実際に存在性を確認するためには少しの微分可能性があればよい。
次の結果は縮小写像の定理の特別な場合である。
命題2.12
$f:I\to J$を任意の$x\in I$に対して$|f'(x)|<1$であるとする。そのとき、唯一の$f$の固定点が$I$に存在する。さらに全ての$x, y\in I, x \mathrlap{\,/}{=} y$に対して
$$|f(x)-f(y)| < |x-y|$$ を満足する。
証明:
命題2.11から少なくとも一つの固定点の存在は保証されているので、$x, y$の両方が固定点であるとし、$x\mathrlap{\,/}{=} y$とする。平均値の定理からある$c$が$x$と$y$の間に存在し、
$$f'(c) = \frac{f(x)-f(y)}{x-y} = 1$$ を満たす。しかし、これは任意の$c\in I$に関する我々の仮定$|f'(c)|<1$に矛盾。それゆえ$x=y$である。
二つ目の主張を証明するために、私たちは再び平均値の定理を任意の$x,y\in I, x\mathrlap{\,/}{=} y$に用いる。
$$|f(y)-f(x)|=|f'(c)||y-x| < |y-x|$$ $\blacksquare$
今日の数学はここまで。続きはまた明日。
【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.1 & §1.2 (4日目)
前書き
この記事はRobert L. Devaney著
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」
- 作者: Robert Devaney
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ニュートン法(続き)
与えられた多項式$Q$に対して、ニュートン法は一つの力学系を生み出す。ここで
$$N(x) = x - \frac{Q(x)}{Q'(x)}$$
とする。$Q'(x) \mathrlap{\,/}{=} 0$である限り$N$は$well-defined$である。人口モデルと同様に、ニュートン法も$N$の反復による力学系に帰着される。ここで何度か出ている疑問をまた考えてみよう。「与えられた$x$で$N$を多く反復したとき、何が起こるだろうか?」 ここでニュートン法はいつでも収束するわけではないことに言及しておく。特定の初期値$x_0$に対して反復による方法は$Q$の根に収束しない。$N$が収束するのに失敗した初期値の集合の構造*1は極めて面白いし(特に複素平面において)、ロジスティックス写像と同じように予測不可能な挙動を導く。この話題については3章で取り上げる。
§1.2 PRELIMINARIES FROM CALCULUS
用語・記号・記法の確認
この章では初等的な(それだけとは言っていない)一変数および多変数の微分積分学の概念を再定義する。私たちは点集合論的位相幾何(point-set topology)の概念も少し使うから、それらも再定義する。まず、用語の意味を固定しよう。$\mathbb{R}$は実数の集合を表す。$I$または$J$は$\mathbb{R}$の閉区間、言い換えると、すべての$I$(または$J$)に含まれる任意の実数$x$は、ある$a, b$にたいして$a < x < b$を満たす。$\mathbb{R}^ 2$は直交座標系の平面を表すこととする。
$f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}$を関数とする。$f$の$x$での導関数を$f'(x)$と表し、二次導関数を$f''(x)$と表す。さらに高次のものは$f^ {(r)}(x)$と表す。任意の実数$x \in I$に対して、$f^ {(r)}(x)$が存在して連続であるとき、$f$は$I$で$C^ r$級であるという。関数$f(x)$が滑らかであるとは、その関数が$C^ 1$級であることである。関数$f(x)$が$C^ \infty$級であるとは、任意の次数の導関数が存在して、かつ連続であることである。この本を通して、関数とは$C^ \infty$級関数を意味する。が、たまに例として連続だが微分不可能な関数を取り扱う。しかし、一般に関数と言ったらそれは$C^ \infty$級である。
普通の微積分学で習うような関数の分類法もある。例えば解析的関数(言い換えると、それらは収束する冪級数で表現される)についてはしばしば登場する。この章での私たちの目的に対して、これらの関数はこれから述べる理由から厳格すぎる。私たちは少し変化することや、全てではなく特定の初期値に対して変化する関数の摂動が認められて欲しいと思う。これは演習問題で紹介するbump functionを使うことによって成し遂げられる。解析的関数に制限した場合、少し変化することは不可能である。なぜなら、任意の冪級数の係数の少しの変化は関数のすべての入力に対する挙動に対して影響するからである。
しばしば登場するいくつかの特別な関数の種類を紹介しておく。関数$f(x)$が線形であるとは、何かしらの定数$a$に対して$f(x)=ax$と表せることである。$f(x)$がAffinであるとは、$f(x) = ax + b$を表せることである。区間の集まりにおいて関数$f(x)$がAffinであるとき、$f(x)$を区分線形という。例えば、$f(x)=|x|+1$は区分線形である。$f(x)$は正の実数と負の実数に対して共にAffinである。
定義2.1
明らかに単調増加・減少する関数は唯一の単射な実数の関数である。もしも$f:I\to J$が単射ならば逆関数$f^ {-1}(x)$が存在し、原則として$f(y)=x$の場合に限り$f^ {-1}(x)=y$である。例えば$f(x) = x^ 3$ならば$f^ {-1}(x) = \sqrt[3]{x}$であり、$g(x)=\tan x$ならば$g^ {-1}(x) = \tan ^{-1} x$である。ここで$g:(-\pi/2, \pi/2)\to\mathbb{R}$であるから$g^ {-1}:\mathbb{R}\to (-\pi/2, \pi/2)$である。
定義2.2
$I, J$を区間とし、$f:I\to J$とする。このとき、関数$f$が全射*3であるとは、任意の$y\in J$に対して$f(x)=y$を満たすような、ある$x\in I$が存在することである。
定義2.3
例えば$\tan x$は$(-\pi/2, \pi/2)$と$\mathbb{R}$の間の準同型である。従って、開区間$(-\pi/2, \pi/2)$は$\mathbb{R}$と同相*5であるという。
定義2.4
$f:I\to J$とする。関数$f(x)$が$f^ {-1}(x)$が$C^ r$級であるような準同型であるとき、$f(x)$は微分同相写像*6であるという。
例えば、$\tan x$が$(-\pi/2, \pi/2)$と$\mathbb{R}$の間で$C^ \infty$微分同相写像であることに気づくのは簡単である。一方、$f(x)=x^ 3$は準同型ではあるが$f^ {-1}(x) = x^ {1/3}$で$(f^ {-1})'(0)$が存在しないので微分同相写像ではない。微分同相写像は高次元での力学系理論で重要になる。
二つの関数の合成を$f\circ g(x) := f(g(x))$と表す。関数$f(x)$に対し、関数自身を$n$回合成したものを$f^ n(x) := f\circ \cdots \circ f(x)$と表す。ここで$f^ n$は$f(x)$の$n$乗したもの(そのような関数は今後使わない)および、$n$次導関数(それは$f^ {(n)}$で表記することにしていました)を表していないことに注意してください。もしも$f^ {-1}(x)$が存在する場合$f^ {-n}(x) := f^ {-1}\circ \cdots \circ f^ {-1}(x)$と書くことにする。
今日の数学はここまで。続きはまた明日。