ToTTi95Uのメモ帳

数学関係のメモ書き

【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.1 & §1.2 (4日目)

前書き

この記事はRobert L. Devaney著
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」

An Introduction To Chaotic Dynamical Systems, Second Edition (Addison-Wesley Studies in Nonlinearity)

An Introduction To Chaotic Dynamical Systems, Second Edition (Addison-Wesley Studies in Nonlinearity)

を1日1時間ほど読んですぐ、内容を記事に起こしたものである。これ以上詳しいことは1日目の前書きを見るべし。

ニュートン法(続き)

 与えられた多項式$Q$に対して、ニュートン法は一つの力学系を生み出す。ここで

$$N(x) = x - \frac{Q(x)}{Q'(x)}$$

とする。$Q'(x) \mathrlap{\,/}{=} 0$である限り$N$は$well-defined$である。人口モデルと同様に、ニュートン法も$N$の反復による力学系に帰着される。ここで何度か出ている疑問をまた考えてみよう。「与えられた$x$で$N$を多く反復したとき、何が起こるだろうか?」  ここでニュートン法はいつでも収束するわけではないことに言及しておく。特定の初期値$x_0$に対して反復による方法は$Q$の根に収束しない。$N$が収束するのに失敗した初期値の集合の構造*1は極めて面白いし(特に複素平面において)、ロジスティックス写像と同じように予測不可能な挙動を導く。この話題については3章で取り上げる。

§1.2 PRELIMINARIES FROM CALCULUS

用語・記号・記法の確認

 この章では初等的な(それだけとは言っていない)一変数および多変数の微分積分学の概念を再定義する。私たちは点集合論的位相幾何(point-set topology)の概念も少し使うから、それらも再定義する。まず、用語の意味を固定しよう。$\mathbb{R}$は実数の集合を表す。$I$または$J$は$\mathbb{R}$の閉区間、言い換えると、すべての$I$(または$J$)に含まれる任意の実数$x$は、ある$a, b$にたいして$a < x < b$を満たす。$\mathbb{R}^ 2$は直交座標系の平面を表すこととする。

  $f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}$を関数とする。$f$の$x$での導関数を$f'(x)$と表し、二次導関数を$f''(x)$と表す。さらに高次のものは$f^ {(r)}(x)$と表す。任意の実数$x \in I$に対して、$f^ {(r)}(x)$が存在して連続であるとき、$f$は$I$で$C^ r$級であるという。関数$f(x)$が滑らかであるとは、その関数が$C^ 1$級であることである。関数$f(x)$が$C^ \infty$級であるとは、任意の次数の導関数が存在して、かつ連続であることである。この本を通して、関数とは$C^ \infty$級関数を意味する。が、たまに例として連続だが微分不可能な関数を取り扱う。しかし、一般に関数と言ったらそれは$C^ \infty$級である。

 普通の微積分学で習うような関数の分類法もある。例えば解析的関数(言い換えると、それらは収束する冪級数で表現される)についてはしばしば登場する。この章での私たちの目的に対して、これらの関数はこれから述べる理由から厳格すぎる。私たちは少し変化することや、全てではなく特定の初期値に対して変化する関数の摂動が認められて欲しいと思う。これは演習問題で紹介するbump functionを使うことによって成し遂げられる。解析的関数に制限した場合、少し変化することは不可能である。なぜなら、任意の冪級数の係数の少しの変化は関数のすべての入力に対する挙動に対して影響するからである。

 しばしば登場するいくつかの特別な関数の種類を紹介しておく。関数$f(x)$が線形であるとは、何かしらの定数$a$に対して$f(x)=ax$と表せることである。$f(x)$がAffinであるとは、$f(x) = ax + b$を表せることである。区間の集まりにおいて関数$f(x)$がAffinであるとき、$f(x)$を区分線形という。例えば、$f(x)=|x|+1$は区分線形である。$f(x)$は正の実数と負の実数に対して共にAffinである。

定義2.1

$f(x)$が単射*2であるとは$f(x)=f(y)$であるときにはいつでも$x=y$であることである。

 明らかに単調増加・減少する関数は唯一の単射な実数の関数である。もしも$f:I\to J$が単射ならば逆関数$f^ {-1}(x)$が存在し、原則として$f(y)=x$の場合に限り$f^ {-1}(x)=y$である。例えば$f(x) = x^ 3$ならば$f^ {-1}(x) = \sqrt[3]{x}$であり、$g(x)=\tan x$ならば$g^ {-1}(x) = \tan ^{-1} x$である。ここで$g:(-\pi/2, \pi/2)\to\mathbb{R}$であるから$g^ {-1}:\mathbb{R}\to (-\pi/2, \pi/2)$である。

定義2.2

$I, J$を区間とし、$f:I\to J$とする。このとき、関数$f$が全射*3であるとは、任意の$y\in J$に対して$f(x)=y$を満たすような、ある$x\in I$が存在することである。

定義2.3

$f:I\to J$とする。$f$が準同型*4であるとは、$f$が単射かつ全射で、しかも連続であることである。

例えば$\tan x$は$(-\pi/2, \pi/2)$と$\mathbb{R}$の間の準同型である。従って、開区間$(-\pi/2, \pi/2)$は$\mathbb{R}$と同相*5であるという。

定義2.4

$f:I\to J$とする。関数$f(x)$が$f^ {-1}(x)$が$C^ r$級であるような準同型であるとき、$f(x)$は微分同相写像*6であるという。

 例えば、$\tan x$が$(-\pi/2, \pi/2)$と$\mathbb{R}$の間で$C^ \infty$微分同相写像であることに気づくのは簡単である。一方、$f(x)=x^ 3$は準同型ではあるが$f^ {-1}(x) = x^ {1/3}$で$(f^ {-1})'(0)$が存在しないので微分同相写像ではない。微分同相写像は高次元での力学系理論で重要になる。

 二つの関数の合成を$f\circ g(x) := f(g(x))$と表す。関数$f(x)$に対し、関数自身を$n$回合成したものを$f^ n(x) := f\circ \cdots \circ f(x)$と表す。ここで$f^ n$は$f(x)$の$n$乗したもの(そのような関数は今後使わない)および、$n$次導関数(それは$f^ {(n)}$で表記することにしていました)を表していないことに注意してください。もしも$f^ {-1}(x)$が存在する場合$f^ {-n}(x) := f^ {-1}\circ \cdots \circ f^ {-1}(x)$と書くことにする。

今日の数学はここまで。続きはまた明日。

*1:ニュートンフラクタルのことだと思われる。

*2:one-to-one

*3:onto

*4:homeomorphism

*5:homeomorphic

*6:diffeomorphism