【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.5 (19日目)
前書き
この記事はRobert L. Devaney著
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」
- 作者: Robert Devaney
- 出版社/メーカー: Westview Press
- 発売日: 1989/01/21
- メディア: ハードカバー
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§1.5 AN EXAMPLE: THE QUADRATIC FAMILY
二次関数族の性質
この節では二次関数の族$F_\mu(x)=\mu x(1-x)$の議論を続けていく。実際、力学系で引き起こされるほとんどの重要な現象の多くを示すため、この章の残りにおいてこの例にしばしば戻ってくるだろう。
命題 5.1
- $F_\mu(0)=F_\mu(1)=0$かつ$F_\mu(p_\mu)=p_\mu$、ここで$p_\mu=\frac{\mu-1}{\mu}$
- $\mu>1$ならば$0<p_\mu<1$
証明
自明。
これから、$\mu>1$の場合を中心に考える。次の命題は$[0, 1]$に属していないすべての点は$-\infty$に向かう傾向にあることを示す。
命題 5.2
$\mu>1$とする。$x<0$ならば$n\to-\infty$のとき$F_\mu^n(x)\to-\infty$となる。同様に、$x>1$ならば$n\to\infty$のとき$F_\mu^n(x)\to-\infty$となる。
証明
$x<0$ならば、$\mu x(1-x)<x$であるから$F_\mu(x)<x$。それゆえ$F_\mu^n(x)$は減少点列である。この点列は$p$に収束できない*1、その場合$F_\mu^{n+1}(x)\to F_\mu(p)$である。一方、$F_\mu(p)\to p$である。それゆえ$F^n_\mu(p)\to-\infty$。$x>1$ならば$F_\mu(x)<0$より同じように$F^n(x)\to-\infty$である。
この命題の結果として、全ての興味深い二次関数族のすべての系は単位区間$[0,1]$に引き起こされることが分かる。低い$\mu$の値に対して、$F_\mu$のダイナミクスは複雑すぎることはない。
命題 5.2
$1<\mu<3$とする。 1. $F_\mu$は$p_\mu=(\mu-1)/\mu$において吸引的な固定点を持ち、$0$において反発的な固定点を持つ。 2. $0<x<1$ならば、
$$\lim_{n\to\infty} F^n_\mu(x)=p_\mu$$
証明
- 前節の最後、例4.10において証明済み。
- まず最初に$1<\mu<2$の場合について扱う。$x$が区間$(0,1/2]$に属しているとする。グラフによる解析により$x\mathrlap{\,/}{=} p_\mu$であるならば、直ちに次のことが示される。
$$|F_\mu(x)-p_\mu|<|x-p_\mu|$$ 図5.1を見よ。結果として$n\to\infty$のとき$F^n_\mu(x)\to p_\mu$であることが分かる。一方で、$x$が区間$(1/2,1)$に存在する場合、$F_\mu(x)$は$(0, 1/2)$に属するから、$n\to\infty$のとき
$$F^n_\mu(x)=F^{n-1}_\mu(F_\mu(x))\to p_\mu.$$ $2<\mu<3$の場合はより難しい。$1/2<p_\mu<1$であることに注意せよ。$\hat p_\mu\in(0,1/2)$を$F_\mu(\hat p_\mu)=p_\mu$を満たすものとする。区間$[\hat p_\mu, p_\mu]$は$F_\mu$によって$[p_\mu, \mu/4]$に写され、この区間は$F_\mu$によってさらに$[\frac{\mu^2}{4}(1-\mu/4), p]$に写される。図5.2に示すように$\frac{\mu^2}{4}(1-\mu/4)<1/2$であるから、結論として区間$[\hat p_\mu, p_\mu]$は$F^2_\mu$によって$[1/2, p]$に写される。したがって、任意の点$x\in[\hat p_\mu, p_\mu]$に対して$n\to\infty$のとき、$F^n_\mu(x)\to p_\mu$となる。次に$x<\hat p_\mu$とする。再び幾何的な解析はある$k>0$が存在し、すなわち$F^k_\mu\in[\hat p_\mu, p_\mu]$を満たすことを示す。それゆえ、この場合でも同様に$n\to\infty$のとき$F^{n+k}_\mu(x)\to p_\mu$となる。最後に$F_\mu$は区間$(p_\mu,1)$を$(0,p_\mu)$に写す(全射)ので、前のものと同様に$F^{n+k+1}_\mu(x)\to p_\mu$を満たす。$(0,1)=(0,\hat p_\mu)\cup[\hat p_\mu,p_\mu]\cup(p_\mu,1)$であるから、これで終わりである。中間の場合、$\mu=2$が残っている。これについては演習問題1.を見よ。
それゆえ*2、$1<\mu<3$のとき$F_\mu$はたった二つの固定点しか持たず、ほかの$I$内のすべての点は$p_\mu$に漸近する。したがって、$F_\mu$のダイナミクスはこの範囲の$\mu$については完全に理解された。
今日の数学はここまで。続きはまた明日。