ToTTi95Uのメモ帳

数学関係のメモ書き

【数学書は1日1時間】An Introduction to Chaotic Dynamical Systems §1.5 (19日目)

前書き

この記事はRobert L. Devaney著
「An Introduction to Chaotic Dynamical Systems Second Edition」

An Introduction To Chaotic Dynamical Systems, Second Edition (Addison-Wesley Studies in Nonlinearity)

An Introduction To Chaotic Dynamical Systems, Second Edition (Addison-Wesley Studies in Nonlinearity)

を1日1時間ほど読んですぐ、内容を記事に起こしたものである。これ以上詳しいことは1日目の前書きを見るべし。

§1.5 AN EXAMPLE: THE QUADRATIC FAMILY

二次関数族の性質

 この節では二次関数の族$F_\mu(x)=\mu x(1-x)$の議論を続けていく。実際、力学系で引き起こされるほとんどの重要な現象の多くを示すため、この章の残りにおいてこの例にしばしば戻ってくるだろう。

命題 5.1

  1. $F_\mu(0)=F_\mu(1)=0$かつ$F_\mu(p_\mu)=p_\mu$、ここで$p_\mu=\frac{\mu-1}{\mu}$
  2. $\mu>1$ならば$0<p_\mu<1$

    証明

    自明。

これから、$\mu>1$の場合を中心に考える。次の命題は$[0, 1]$に属していないすべての点は$-\infty$に向かう傾向にあることを示す。

命題 5.2

 $\mu>1$とする。$x<0$ならば$n\to-\infty$のとき$F_\mu^n(x)\to-\infty$となる。同様に、$x>1$ならば$n\to\infty$のとき$F_\mu^n(x)\to-\infty$となる。

証明

 $x<0$ならば、$\mu x(1-x)<x$であるから$F_\mu(x)<x$。それゆえ$F_\mu^n(x)$は減少点列である。この点列は$p$に収束できない*1、その場合$F_\mu^{n+1}(x)\to F_\mu(p)$である。一方、$F_\mu(p)\to p$である。それゆえ$F^n_\mu(p)\to-\infty$。$x>1$ならば$F_\mu(x)<0$より同じように$F^n(x)\to-\infty$である。

この命題の結果として、全ての興味深い二次関数族のすべての系は単位区間$[0,1]$に引き起こされることが分かる。低い$\mu$の値に対して、$F_\mu$のダイナミクスは複雑すぎることはない。

命題 5.2

$1<\mu<3$とする。 1. $F_\mu$は$p_\mu=(\mu-1)/\mu$において吸引的な固定点を持ち、$0$において反発的な固定点を持つ。 2. $0<x<1$ならば、

$$\lim_{n\to\infty} F^n_\mu(x)=p_\mu$$

証明

  1. 前節の最後、例4.10において証明済み。
  2. まず最初に$1<\mu<2$の場合について扱う。$x$が区間$(0,1/2]$に属しているとする。グラフによる解析により$x\mathrlap{\,/}{=} p_\mu$であるならば、直ちに次のことが示される。

$$|F_\mu(x)-p_\mu|<|x-p_\mu|$$ 図5.1を見よ。結果として$n\to\infty$のとき$F^n_\mu(x)\to p_\mu$であることが分かる。一方で、$x$が区間$(1/2,1)$に存在する場合、$F_\mu(x)$は$(0, 1/2)$に属するから、$n\to\infty$のとき

$$F^n_\mu(x)=F^{n-1}_\mu(F_\mu(x))\to p_\mu.$$

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図5.1 $1<\mu<2$のときの$y=F_\mu(x)$の概形
 $2<\mu<3$の場合はより難しい。$1/2<p_\mu<1$であることに注意せよ。$\hat p_\mu\in(0,1/2)$を$F_\mu(\hat p_\mu)=p_\mu$を満たすものとする。区間$[\hat p_\mu, p_\mu]$は$F_\mu$によって$[p_\mu, \mu/4]$に写され、この区間は$F_\mu$によってさらに$[\frac{\mu^2}{4}(1-\mu/4), p]$に写される。図5.2に示すように$\frac{\mu^2}{4}(1-\mu/4)<1/2$であるから、結論として区間$[\hat p_\mu, p_\mu]$は$F^2_\mu$によって$[1/2, p]$に写される。したがって、任意の点$x\in[\hat p_\mu, p_\mu]$に対して$n\to\infty$のとき、$F^n_\mu(x)\to p_\mu$となる。次に$x<\hat p_\mu$とする。再び幾何的な解析はある$k>0$が存在し、すなわち$F^k_\mu\in[\hat p_\mu, p_\mu]$を満たすことを示す。それゆえ、この場合でも同様に$n\to\infty$のとき$F^{n+k}_\mu(x)\to p_\mu$となる。最後に$F_\mu$は区間$(p_\mu,1)$を$(0,p_\mu)$に写す(全射)ので、前のものと同様に$F^{n+k+1}_\mu(x)\to p_\mu$を満たす。$(0,1)=(0,\hat p_\mu)\cup[\hat p_\mu,p_\mu]\cup(p_\mu,1)$であるから、これで終わりである。中間の場合、$\mu=2$が残っている。これについては演習問題1.を見よ。
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図5.2 $2<x<3$における$y=\frac{x^2}{4}(1-x/4)$

それゆえ*2、$1<\mu<3$のとき$F_\mu$はたった二つの固定点しか持たず、ほかの$I$内のすべての点は$p_\mu$に漸近する。したがって、$F_\mu$のダイナミクスはこの範囲の$\mu$については完全に理解された。

 

今日の数学はここまで。続きはまた明日。

*1:$|\mu x(1-x)-x|$は$x$が減少するほど増加する。

*2:これ以降の文章は2019年8月15日に追記された